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【旧】銀英伝 異伝、フロル・リシャール
第3次ティアマト会戦(4)
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と目される艦隊です。どの艦隊であっても苦戦を強いられたでしょう」
「例えばリシャール准将であれば、これに対処できる自信があるじゃろう?」
 ビュコックは悪戯っけのある顔で、冗談のようにフロルに言い放ったが、その目が笑ってないことにフロルは気づいていた。
 まるで言葉を詰まらせたフロルを助けるかのように、司令部に第10艦隊から直通通信が来た。ウランフ中将からである。
「キリがありませんな。どうでしょう、ビュコック提督。ここは第10艦隊が無理矢理左から押し込んで、敵を右に動かすというのは」
「それは、第5艦隊は少し退いた方がいいかもしれんな」
 ビュコックもまた、同じことを考えていたのか、即座に言い返した。フロルももちろん一度は検討した案だった。問題は、成功率である。
「敵を左から右に移すのであれば、第5艦隊が支点になってもよろしいでしょう。要は、敵正面2個艦隊を左から圧迫して、巧いこと右に動かし、んでもって敵奇襲部隊と合流させてやればいい」
「艦隊が合流すれば、苦戦は確実じゃぞ」
「我が艦隊が、痛めつけてやりますよ」
 ウランフは野獣のような獰猛さを滲ませて、笑いながらそう言った。つまり、敵を動かす際に逃がさぬように被害を与えればよい、ということだった。
「扇状の敵誘導はこの状況下では難しすぎる。第5艦隊が徐々に退きながら、第10艦隊が敵側面を圧迫してくれ」
「わかりました、それで行きましょう」
 これは側面を攻撃しようとする点において帝国の今回の作戦と同じではあったが、多少規模が小さくなり、複雑化した点において異なっている。ウランフの第10艦隊が正面の敵を左からの攻撃で徐々に圧迫し、更にビュコックの第5艦隊が退いて敵の突出を促す。これが有機的に連動し上手くいけば、敵の右方への誘導が可能となる。非常に高度な艦隊運動を必要とする、戦術だった。
「だが、問題は第4艦隊じゃ」
「ええ、まったくです」
 ウランフは嫌悪感を隠さず、吐き捨てるように言った。それを見たビュコックが微かに眉間に皺を寄せたが、何も言わない。
「ですが、フィッシャー准将がいるから、大丈夫でしょう。いや、そう思っていなけりゃやってられませんよ」
 ウランフはそう言うと、険しい顔のまま、敬礼をして通信を終わらせた。答礼したビュコックもまた、上げた手を下ろしたが、その顔に憂いが一瞬浮かんだことにフロルは気付いていた。
「……連絡艇を用いて第4艦隊と連絡をつけろ。この混乱の中じゃ。通信が届くとも思えん」
「わかりました。直ちに」
 フロルは鋭く敬礼をすると、ビュコックの元を離れた。フロルは思う。例えフィッシャー准将がいくら優秀であっても、それが艦隊司令の能力を補うには至らない。そして対する敵はあのラインハルト・フォン・ミューゼルだ。
??抜かれるのは、時間の問
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