第3次ティアマト会戦(4)
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絶対であるとは考えていなかったのだ。
だからといって、これを超えられる人材が豊富にいるわけがないこともわかっている。彼らは、非常に健全な自己評価を自身に与えていたのだ。
「だが、このような作戦はミッターマイヤー少将の得意とするところではないのかな。卿にとっては、その神速が生かされる好機であろう」
「俺にしてみれば、ロイエンタールがいるから心置きなく攻撃に専念できると思っているんだがな」
「俺だって攻勢に回りたいさ、ミッターマイヤー」
「わかっている。そして、何より舵取りはミューゼル中将だ」
彼らはお互い頷き合い、通信の終わりとした。そして残り僅かとなった時間表示に目をやった。それは有効射程距離到達予想時間だった。
だが両軍が有効射程距離に入っていないにもかかわらず、同盟軍の砲撃が開始される。それを見てロイエンタールは嘲笑を小さく浮かべた。
「敵はどうやら先走ったようだな。この距離で届くわけがなかろうに」
ミッターマイヤーとロイエンタールが、第4艦隊は撃破できる、この側撃が成功すると確信したのは、この瞬間だったのかもしれない。
***
フロルはビュコックの横で戦況を見つめていた。思わしくない、それが彼の感想だった。
正面に陣する帝国2個艦隊は、同盟軍の攻撃に対して柔軟に対応し、こちらが近づけば距離を縮めすぎぬように遠ざかる、ということを繰り返していた。自然、同盟は引きずられるように前進を続けることになるが、ビュコックたちはそれを止めざるを得ない。このまま進めば、1個艦隊と2個艦隊に同盟軍が分離されるからである。戦力の分散を避けるのは常道である。まして、同盟の第4艦隊は半ば奇襲を受けて苦しい戦いをしているだろう。仮にこれが撃破された場合、近くに友軍がいなければ、第4艦隊は全滅を余儀なくされる。更に言えば、これを突破した敵奇襲艦隊が同盟2個艦隊に突撃を敢行すれば、理想的な前後二面挟撃が出来上がる。
よって、同盟は第4艦隊を壊滅させることなく、奇襲部隊を足止めし、更に正面の2個艦隊に対処せざるを得ない。
だが帝国2個艦隊はそれがわかっているのか、決して深入りをしようとはしない。
堂々巡りだった。
「いっそのこと、艦隊を分けて各個に対処しますか?」
フロルは暗い表情のまま、ビュコックに問いかける。これが下策とわかっているのだ。
「そして各個に撃破される、か」
「ですが、奇襲を受けた第4艦隊はともかく、第5、10艦隊は帝国2個艦隊に負けるとも思えませんが」
「問題は第4艦隊じゃ。あそこに第4艦隊を配したのは間違いだったかもしれん。大事に、卵を守る親鳥のように、中央に置いておくべきだったのかもな」
ビュコックはここに至っても焦燥や不安を顔に欠片も浮かべていなかった。
「敵は最精鋭
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