第3次ティアマト会戦(4)
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に当たるに際し、紡錘陣形を選択した。士気を高め、敵を思うがままに混乱させるには、艦隊を密集隊形にし、攻撃に特化させるしかないと考えたのだ。彼の部下には優秀極まる二人の少将がいた。
オスカー・フォン・ロイエンタール少将と、ウォルフガング・ミッターマイヤー少将である。両者は先の第6次イゼルローン要塞防衛戦の戦功によって、少将へと昇進していた。よって彼らの指揮するのは数千規模の分艦隊になったわけだが、彼らは好んでラインハルト艦隊に残ることを選んだ。彼らは、ようやく見つけた有能な上司から離れる気など、まったくなかったのである。それに、ラインハルトは皇帝の寵姫の弟。彼の下についていれば、ある程度の庇護が受けられるだろうという思惑もあった。だが何より、彼らがラインハルトの戦いぶりを見て、それを大いに認めたからであろう。今の帝国において、彼らと肩を並べて戦うことのできる人間を、彼らが命を預けても大丈夫だと思える上司を彼らは他に知り得なかったのだ。
「だが、ミューゼル中将にはいつも驚かされるものだ」
ミッターマイヤー少将が人懐っこい笑みを浮かべながら、ディスプレイ越しのロイエンタール少将に言った。
「ああ、まったくだ。自ら、このような作戦を提案するとはな」
「やはり、卿もそう思うか」
彼らが言っているのは、1個艦隊で敵右翼に突撃するような獰猛な作戦を、ミュッケンベルガー元帥のような老人が発想するか、ということだった。事実、ミュッケンベルガーがラインハルトに発案させ、それを採用したという両人の想像通りの展開であった。
「なかなかどうして、我らが上司殿は楽をさせてくれそうにないな」
ロイエンタールは戦いに臨む興奮で多少饒舌になっているようだった。
「我々にしてみれば、その方がいいだろうさ。戦功を立てやすいし、ミューゼル中将ならば我らを捨て駒にもしないだろうさ」
「わからんぞ、我らより使えそうな手駒を見つければ、ぽいと捨てられるかもしれん」
ロイエンタールは歪んだ笑みを浮かべたが、そこに憂いはなかった。
「我らより優秀な軍人か……いるのなら、会ってみたいな」
ミッターマイヤーもそう言い返したが、それだけ彼らは己の力量に自信を持っていたのである。もっとも、これはかつてラインハルトが抱いていた無限の自信とは種を別にするものだった。彼らは自分たちが全知全能だとはかけらも思っていない。それは二人が出会ったとき、失った幻想だったろう。彼らはお互いを十分に認めていたから、自分が他人に及ばないところがあることもまた、理解していたのだ。ミッターマイヤーはロイエンタールの卓越した攻守の均衡に敵わないと知っていたし、ロイエンタールはミッターマイヤーの神速で狂いなき艦隊運用には敵わぬと悟っていた。
彼らはお互いが非常に高い能力を有していると知りながらも、それが
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