第3次ティアマト会戦(4)
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第3次ティアマト会戦(4)
帝国軍ラインハルト艦隊旗艦、標準戦艦タンホイザーの艦橋には、ラインハルト・フォン・ローエングラム中将その人がいた。その荘厳豪華な風貌は周りの人間を圧倒させるだけの迫力と気品に満ちており、知らぬ者が見れば卑しい帝国騎士の出自とは到底信じ得なかったろう。その傍らにはルビーを溶かし染め上げたような髪を持ち、190センチになんなんとする美丈夫、ジークフリード・キルヒアイスが立っていた。
「どうやら、気付かれましたね」
「ああ、叛乱軍は臆病なまでに偵察衛星やら偵察部隊を配置している。万全を期すと言えば聞こえはいいが、多少慎重に過ぎるのではないか?」
「優秀な将ほど慢心をしないと言います。叛乱軍の司令官がそれだけ有能だということの現れでしょう」
キルヒアイスはラインハルトの愚《・》痴《・》にそのような言葉で応えた。ラインハルトはキルヒアイスに目をやると、幼き頃から変わらない悪ガキ小僧の笑みを浮かべる。
「この俺が、勝てないと思うのか、キルヒアイス?」
「ラインハルトさまが勝たずして、いったい誰がそれを成し得ましょう?」
キルヒアイスの言葉に満足したように、ラインハルトは前を向いた。ディスプレイには叛乱軍の第4艦隊の映像が拡大されて表示されている。
「この速度では、回頭する程度の時間しか叛乱軍には残されていまい。第4艦隊の司令官は誰であったか」
「ラウロ・パストーレ中将です」
ラインハルトは何かが気にかかったように、顔を曇らせた。
「聞かぬ名だな」
「あまり評判の良い軍人ではありません。政治家との癒着を噂される人物です」
ラインハルトは一瞬、軽蔑の色を顔に浮かべた。
「帝国にも腐った軍人は多いが、ご他聞に漏れず叛乱軍でも同じようだな」
「ですが、この男はかつてフロル・リシャール准将の上司だった男です」
ラインハルトとキルヒアイスの目に、鋭く光が走った。二人は今なお、その脳裏に強くフロル・リシャールのあの眼光を覚えていたのである。彼らにとって、ヴァンフリート4=2での出来事はそれだけ強烈だったのである。
彼らはヴァンフリートからの帰還後、彼らなりにフロル・リシャールのことを調べていた。彼らは特別、情報戦に特化しているわけではなかったが、それでも一定以上の能力を有した軍人であった。彼らは膨大な量に及ぶ軍事データベースから、フロル・リシャールに関連する情報をことごとく手に入れていた。幸《・》運《・》なことに、帝国軍にはフロル・リシャールの第5艦隊転属前までのレポートが比較的豊富に残っていたからであった。最近になればなるほど、情報が少なくなっていたが、それはどうやら同盟の情報管理能力が全体的に向上していたせいだったようだ。
それでもフェザーン経由の情報や数少ない帝国情報
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