第3次ティアマト会戦(3)
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謳われるだけはある。
グレゴール・フォン・ミュッケンベルガー元帥は胸を張って威風堂々としたまま、矢継早に指令を飛ばし続けていたが、内心では感嘆の思いを抱いていた。
帝国2個艦隊を同盟3個艦隊と正面からぶつけて、既に30分を迎えようとしていた。この30分、もしこの帝国2個艦隊を指揮するのがミュッケンベルガーほどの男でなければ、早々に戦列は瓦解していたことであろう。
それほどまでに、苛烈な砲撃を同盟はこちらに加えてきている。同盟の攻撃は単純であった。こちらの宇宙母艦や中級指揮艦を見つけると、徹底的に火力を集中させているのである。それは非情なまでの火力の集中、と言うべきだった。いったいどのような戦艦が、300もの中性子砲と300のミサイルによる一点攻撃を防ぎうるであろうか。敵に捕捉されるやいなや、それらの艦は一瞬で爆散していた。おかげで、ミュッケンベルガーはそれらの艦を最前線から一つ引いた場所に置くことを余儀なくされていた。本来現場の士気を円滑にするためには、中級の指揮艦は可能なかぎり前線にいた方が有機的に行動できるはずなのだ。だが、同盟の徹底した排除により、末端における艦隊運動に支障を来すのは明らかだったからである。
さらにこちらの指揮系統が混乱したところに、一気に攻撃を加える、機を読むに長けた敵の艦隊運動。高度な技術によって、同盟指揮官の伝達する指令が末端まで行き届いているのが、ミュッケンベルガーの側からも見て取れた。
「だが、こちらも馬鹿ではないということを、見せてやろうではないか」
ミュッケンベルガーはディスプレイに表示されたデジタル数字を見て嗤った。
それはラインハルト艦隊の強襲予定時間を指し示していた。
***
「偵察部隊より入電! 右翼より約1万の艦隊接近す!」
「なんだと!」
悪態を吐いたのは誰だったのか、それがわかる前に艦橋は困惑の声で満ちた。フロルはすぐに現状を認識した。ラインハルト艦隊は、饒回進撃をして、こちらの右翼を突くつもりなのだ。つまり、あの後ろにいた1個艦隊は??。
「第10艦隊に連絡! 足の速い駆逐艦でもって敵艦隊後方のデコイを潰せ!」
「リシャール准将、やはりあれはデコイだったか」
ビュコックの予想は正しかった。だが、フロルに問いかけたビュコックの顔は、見極めきれなかったことを後悔するかのように、小さく歪んでいた。
「ええ、でも偵察部隊を出していたおかげで、完全な奇襲は避けられそうです。??右翼の敵艦隊との会敵予想時刻は!」
フロルは通信兵に問いかけた。ヘッドホンを押さえて、キーボードを猛烈な勢いで叩いていた通信兵が、エンターキーを押した。
「距離は60光秒! 残り10分です!」
フロルは頭を働かせる。この時間では第4艦隊が迎撃するしか、選択肢はなか
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