第3次ティアマト会戦(3)
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効射程距離までの残量時間は、既に30分を切っていた。
「……念のため、艦隊全方面に偵察を出します。何か、あるかもしれない」
ビュコックはフロルに頷いてみせた。ウランフも、そして遅れてパストーレも許可の頷きを返した。このことが、この会戦を左右する判断であったことに彼らはまだ気づいていなかった。
艦橋に上がったビュコックは静かに艦隊司令の席に腰を下ろした。フロルもまた、その横に立つ。手に持った端末で、徐々に届けられ始めた偵察情報に目を通し始めていた。
「前方、120光秒に敵2個艦隊! ミュッケンベルガー艦隊およびシュターデン艦隊です!」
通信兵が叫んだ。
「艦型から旗艦の判別は付くか?」
「現在解析中です!」
「このままだと、正面衝突になりますね」
フロルの言葉に、ビュコックは黙ったままだった。
1710時、両軍の衝突は数の差こそあれ、平凡なものだったろう。数の上で勝負にならないはずの帝国軍も、その士気は高く、そして強靭だった。それはフロルの想像を超えたものだった。帝国は遠路を突破し、この会戦に望んでいる。兵の疲労もあるだろうに、それを感じさせない攻撃であった。
同盟もまた、砲撃とミサイル攻撃を敵艦隊に集中させ、その勢いを挫かんとしている。足並みを揃えた3個艦隊の密集隊形の火力は、熾烈を極めた。
だがそれも段々と帝国が押されるように推移し始める。当然の結果だった。
「第4、第10両艦隊に伝達! 両翼を前進させ、もって帝国軍の半包囲を行動目標とせよ!」
ビュコックの新たな指令があったのは、1740時のことである。
これはいわば定石と言っても過言ではなかった。今回の同盟軍の目標は帝国を撤退に追い込むことである。ある程度の被害を与えるために、半包囲による大打撃を狙わんとしたのだ。もっとも、退路を塞ぐほどの戦力があるわけではない。全滅は元から無理だったが、それでも少なくない被害を与えようとしていたである。
「情報特務艦は後方の艦隊を捕捉したか?」
高度に発達した情報戦電子戦は戦場を旧来の形に戻している。通信技術が奇形的に発達した一時期を除き、艦隊戦は非常に原始的、つまり肉眼での伝達が基礎となっていた。情報特務艦とはそういった中でもレーダーなどの通信技術を特化させた戦艦であり、武装が少ない代わりに装甲に重きを置いたものだった。
「い、いえ! 敵艦隊は我が艦隊と一定の距離を保ち、こちらの捕捉範囲に入ろうとしません!」
フロルはずっと考えていた。帝国軍の徹底的なまでに綿密な偵察衛星の破壊、同盟電子網の妨害、そして決して近づこうとしないラインハルト艦隊……。
その時、フロルは気づいた。そして顔を上げた瞬間、その通信が入ったのだった。
***
??さすが、同盟において名将と
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