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【旧】銀英伝 異伝、フロル・リシャール
第3次ティアマト会戦(3)
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たが、通常3個艦隊の中央はその艦隊群の司令官がいるべき位置なのだ。よって結局はビュコック艦隊が中央になったわけだが、これがビュコックの作戦運用に陰を落としていたのは紛れもない事実だったろう。例えばアクティヴな迎撃行動に出ようと思っても、意思疎通、十全な連携の期待できない1個艦隊があるだけで、それが叶わないのだ。
 フロルはそれに頭を悩ませる人間のうちの一人であったが、彼の知っている歴史通りに進みつつある第3次ティアマト会戦は始まろうとしていた。正史では、ホーランドの突出をラインハルト艦隊だけが避けて後退を重ねた。それによってホーランド艦隊に対応したのはミュッケンベルガー元帥率いる2個艦隊となったのだ。
 今回は偶然なのか、奇妙にもその形と同じになりつつある。ラインハルト艦隊は一人後方に配され、猛烈な勢いでこちらに向かってくるのはミュッケンベルガー元帥率いる帝国軍2個艦隊だったのだ。
 だがこれをそのまま受け取るほど、フロルは楽観的な軍人ではなかった。戦力の逐次投入はもっとも嫌われるものだ。だがミュッケンベルガー元帥はそれをしようとしている。ミュッケンベルガー元帥とラインハルトとの対立が原作並みに悪化していたとして、ラインハルトを疎むということは十分に予想されたはずだった。だが、これは奇妙に過ぎた。ラインハルト艦隊を捨て駒に単艦隊突撃させるならまだわかる。そこで混乱を同盟にもたらし、それを悠々と蹂躙するとするならば、正しくミュッケンベルガーの考えそうなことだった。事実、フロルの知る正史では第4次ティアマト会戦でそれが行われている。
 だが、今回の陣容では、ラインハルト艦隊だけが安全圏にいる。

「リシャール准将はどう思う」
 アレクサンドル・ビュコック中将が作戦会議室に入ってきたフロルに問いかけた。フロルは一つ頷いて、ビュコックの近くの椅子に座った。フロルはベレー帽を机に置く。手元の端末を操作して、艦隊陣形図をホログラムで表示した。
「問題は、後方の艦隊です。この艦隊は先の第5次イゼルローン要塞攻略戦で我が軍を引っ掻き回したあの司令官の艦隊のようです」
「ああ、あの小賢しい分艦隊か」
「ええ、恐らく」
『その情報は正しいのかね』
 そう問いかけたのは、ディスプレイの向こうから作戦会議に参加しているウランフ中将だった。作戦会議の壁の一面にはディスプレイが並び、第4艦隊、第10艦隊の各艦隊司令及び高級幕僚が参加していた。
「あくまでフェザーンから手に入れた情報です。頭から信じるわけにも行きませんが、我が軍の情報部も恐らく間違いないだろうと」
 ウランフは一瞬目を細めたが、それ以上は言おうとしなかった。恐らく、フロルが情報部に親しいという噂を思い出したのだろうが、それがこの作戦に直接影響しないから、と口にすることを憚ったらしい。
『する
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