第3次ティアマト会戦(2)
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のおかげで、エネルギー残量は未だ60%を残していたが、帰還に必要なエネルギーと、ドックファイトの時の急激な駆動によって失われるエネルギーを考えれば、決して余裕のある状態ではなかった。
ポプランは視線でその表示を消し、改めてコックピッドのディスプレイを見た。そして声をかけようとして、先ほどより顔を青白くしたムラサメ少尉を見て、事態の悪化を察した。
『本隊が敵艦隊の交戦に入った模様です。艦隊通信本部より緊急帰還命令が来ました』
「とうとう始まったか」
ポプランは小さく頬を歪めて笑った。
『なら俺たちも戻らなきゃならんが……ポプラン』
「ああ、わかってるよ」
その時ポプランは言い知れぬ違和感を感じていた。それは幾多の戦いをくぐり抜けてきたポプランやコーネフだけが感じ取っていたものだった。
殺気である。
『ムラサメ、周辺に敵影はあるか?』
『ありません。少なくとも索敵レーダーは何も』
「アクティヴ・ソナーを使え」
それはポプランの指示だった。アクティヴ・ソナーは特殊で強力な電磁波を全方位に発信し、その反射波によって敵を見つける能動的索敵装置だった。この装置の欠点は敵にもこちらの位置を知らしめてしまうことであり、しかもこの装置は強行偵察型試作機に試験的に搭載されたものだった。本来ならば敵雷撃艇や戦闘機を恐れる駆逐艦や巡航艦に搭載されるものなのだ。それを小型化したものが、今回のムラサメ機に搭載されている。
『ですが、それでは万一敵がいたら??』
「俺たちの任務は敵の発見を含む偵察だ。敵の伏兵がいないかを確認するのも重要な任務なんだぞ」
『俺もポプランに賛成だ。それに嫌な予感がする』
『それは勘、ですか?』
ムラサメが声を小さく震わせながらコーネフに聞いた。
「俺たちは自分の腕と勘で生きてんだ! 運命の女神は俺にぞっこんでな」
『ポプランの馬鹿は放っておいていいが、確かに俺も嫌な感じがするのは事実だ。技術部の自信作、一か八かで使ってみようじゃないか』
結局、この偵察小隊の隊長であるポプランの意見が通ることになった。
アクティヴ・ソナーは数分で起動が完了した。ポプランはコックピッドの風防のディスプレイを索敵モードとしてムラサメ機と同期した。これで、敵が発見されればすぐさまポプランにもわかるようになったのである。
『アクティヴ・ソナー、起動準備完了。索敵電磁波発信5秒前。5・4・3・2・1・発信!』
見ることも、聞くことも、感じることもできないはずの電磁波が体を通り抜けたのをポプランは感じた。
『反射波確認! 解析開始!』
「終了まで何分だ!」
『いえ、残り10秒!』
その時、ポプランは天頂方向で何かが光るのを知覚した。瞬間、ヘルメットは望遠モードに映り変
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