第3次ティアマト会戦(2)
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パルタニアン三隻ではなかなか難しい戦いになるだろうが、ポプランとコーネフの腕があれば、一気に始末できる、という自信がポプランにはあったのだ。彼らはそれだけの天性の勘と才能があった。彼らの技術も円熟期に入り、この二人がドッグファイトで遅れをとるような敵は、もうしばらく現れていなかった。
「本隊は何か言っているか?」
『少し待って下さい! なんだか、向こうが混乱しているみたいで』
『こりゃ、他の宙域で敵本隊が見つかったのかもな』
ポプランはその言葉を聞いて、肩を落とした。自分は戦う気まんまんでいたのだ。数隻程度の敵部隊ならば、ムラサメがなんと言っても突入するつもりだった。第6次イゼルローン要塞攻略戦で、ポプランは愛機の故障のおかげでまともの戦いができなかったのである。しかも、配属が第5艦隊旗艦リオ・グランデであったから、なかなか前線に出ることもなかった。
ポプランはコックピット内で背を伸ばした。肩を回し、一息ついて背もたれによしかかる。これから急いで本隊に戻っても、補給をしてからであろうから、ダンス・パーティーには完全に乗り遅れる。幸運なら後半戦に間に合うだろうが、差し当たって貧乏くじだった。
ムラサメ機にはポプラン、コーネフの両機にはついていない長距離通信設備が取り付けられていた。技術部の位置づけでは試作型強行偵察型スパルタニアンの5号機であった。三機構成のスパルタニアン偵察部隊は原則として一機に、このような長距離通信設備と電子線設備が搭載されており、この試作機では電子支援用に特化された機体である。他のスパルタニアンにはない装備が機体上部に装着されていた。
ムラサメ少尉はこの三人の中でも、技術研修を受けた唯一のパイロットだったため、今回通信担当になっていた。もっとも、本来義務であるこの研修をポプランやコーネフが受けていたとしても、彼らはこの不格好な通信設備を愛機に取り付けることを拒否しただろう。彼らにとって愛機は手足のようなものである。ほんの僅かなバランスの違いすら彼らには手に取るようにわかる。彼らは完璧に愛機を理解し、操っていて、その感覚を狂わせるような改造はしたくないのだ。
スパルタニアンのヘルメットの複合セラミックには透明ディスプレイの機能も付与されていた。ヘルメットに内蔵された脳波診断器と、パイロットの視線を読み取る内蔵カメラがパイロットの望む情報を瞬時に読み取り、ヘルメットのシールド部に表示するようになっているのだ。このとき、ポプランのヘルメットには機体の小型核融合エンジンのエネルギーと主砲の中性子ビーム砲、それに機銃のウラン238弾の残量が表示されていた。偵察任務では簡易型核エンジンが増槽のように機体についている。これは長距離偵察用の装備である。むろん、ドッグファイトが始まると切り離せるようになっていた。その増槽
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