第3次ティアマト会戦(1)
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入れていなかったが、ロボスが老人性の健忘症の類に罹っているのではないか、とまで推測していた。彼が動かしている情報部第三課をもってしても、まだそれは見出せていなかったが、その能力の減衰は明らかだったのだ。
今回の第三次ティアマト会戦でも、フロルは途中からロボスが前線に来るのを引き止めるように暗躍した。もともと出すのを惜しんでいた国防委員会に働きかけ、増援の二個艦隊の出動を意図的に遅れさせ、ロボスの幕僚にも比較的慎重派の壮年の者を集めるようにした。すべてはロボスが前線に来て、その指揮権を振るわぬようにするための裏工作だった。
??ロボスはおかしい。
これはフロルが原作の知識を読んでいた時から感じていた疑問だった。ある時までは名将、勇将と名高かったラザール=ロボス元帥。それが第6次イゼルローン要塞攻略戦を境にしてその能力を衰えさせている。その急激な衰えは単なる老人性のものなのだろうか。
フロルはそこに違和感を感じさせていた。確かに老人性健忘症ならば、説明はつく。だが、なぜこのタイミングでそれが進んだのか……。
『ロボス元帥はすっかり動きにくくなったらしく、第3次ティアマトの会戦でも後方に陣していると聞いていますが?』
フロルの思考を止めたのはヤンの言葉だった。
「ああ、前線部隊三個艦隊で、ほぼ同数の帝国軍と戦うことになるだろう」
『あまり……よくないですね』
ヤンは困ったように言ったが、フロルにしてみれば予想の範囲である。
「いや、数は同数なんだ。少なければ困るが、同数ならばどうにかなる。それこそ、俺のようななんちゃって准将でもな」
『謙遜はいいですよ、フロル先輩』
「おまえさんこそ、准将だって? 俺と同じじゃないか。出世するなら俺よりおまえが先だと思ってるんだがな」
『思うのは自由ですが、ご期待には沿えないでしょう』
フロルは一つ小さく笑ってから、笑みを消した。与太話もここまで、という意味である。ヤンも鋭くそれは読み取ったらしく、画面の向こうで椅子に座り直したようだった。
「ヤン、敵さんはどう動くと思う?」
『……同数の艦隊同士の艦隊戦ですか』
「だが条件は同等ではない。帝国はここまで数百光年を旅してやってきたところだが、同盟は補給も休息も訓練も十分な状態にある。更に同盟は自らの艦隊が動きやすい場所に戦場を任意に設定できた。それが今回のティアマト星域なわけだが、その地理的な条件も同等とは言えんだろう」
『ですが攻めるのは帝国で、守りに入るのは同盟です。士気の高さはどうでしょう』
「帝国軍としては勝たねば帰れぬだろうからな、死に物狂いで戦うか?」
『少なくとも、帝国軍の指揮官は。今回の出兵に関する情報部のレポートを読みましたが、帝国は皇帝の戴冠三十周年に箔を付けるために出兵したそうです。逆に言えばここで無惨な敗
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