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【旧】銀英伝 異伝、フロル・リシャール
歯車の軋み
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ていた。
「いいや、もう死なせるようなことはしない」
「私は別に??」
「違う、イヴリンがそれでよくても、俺はもう無理だ」
 フロルは必死に涙を抑えようとした。それがいったい何に対する涙かも、彼には理解できていなかった。ただ、涙だけが溢れてきた。
「たった一度、失いそうになっただけで、俺はもうボロボロなんだ。もう心が苦しくて、夢にまで見て、耐えられない」
 フロルは、そっとイヴリンを抱きしめた。今度はイヴリンの頭が彼の胸に収まった。
「もう決してこんなことはしない。今わかったんだ。俺が守りたいのは、誰よりもイヴリンだって。わかった、イヴリンが死ぬくらいなら、俺が死ぬよ」
「私は嫌よ」
 イヴリンは彼の胸に囁いた。
「ああ、だからお互いがお互いのために死ねると思ってるんだ。救われないよ。だから、お互いがお互いのために生きよう。だからイヴリン??」

??結婚しよう。

「え?」
「都合がいいだろう。俺もなんて非道いことかわかってる。だけど、もうやめだ。俺は君のために生きるよ。君の言葉で、そう思えた。こんな屑みたいな俺のために、そう言ってくれる女性なんて??」
「??私しかいないわ」
「ああ、だからもう??」
「ねぇ、じゃあ一つだけお願い」
「なに?」
「私が生きている間、あなたと人生を歩む最期の時まで、私を愛して。私は嫉妬深いの。殺されてもいいけど、愛されないのは耐えられない。だから、私が死ぬまで、ずっと愛して。おばあちゃんになっても、愛して。誓える?」
 フロルは右手でそっとイヴリンの顔を上げた。目は赤く、涙に濡れていた。
 だが綺麗だった。
 窓の外の、星の光で照らされたその顔は、
 美しかった。
 
 接近。
 接触。
 接吻。
 口づけ。

「誓おう、俺の全身全霊をかけて」
 フロルは涙をこらえて、イヴリンの顔を見つめた。
 その絵を、決して忘れないように。
 イヴリンは笑った。先ほどまでとはまた少し違う、笑みだった。
「私も、あなたを愛するわ。私が死ぬ最期の時まで、ずっと」
「ああ、俺も」
「ずっとよ」
「わかってる。もう絶対に離さない」
「誓って?」
「この世の全てに誓って」
「本当に?」
「本当に」
「私も本気よ」
「わかってる」
「私もあなたのために生きるわ」
「俺も、君のために生きる」

 そう、誰よりも??ヤンよりも??君のために。





















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