歯車の軋み
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悪夢だった。
「俺はサローニと変わらない……?」
フロルは天井を見た。
真っ暗闇の部屋。
そこには何も見えなかった。
夢は強烈な現実感を伴っていた。
イヴリンの姿。
思い起こすだけで、眼球の奥が痛むようだった。
握りしめられていた拳を、ゆっくり開いた。自分の右手を見つめる。
ソファ横の時計を見た。時刻は午前4時だった。仕事をして、そのまま部屋のソファで仮眠を取っていたのだ。そして悪夢を見た。
この世界では、あの夢のようなことにはなっていない。イヴリンは生きている。グランド・カナルどうにか助けた。フェーガンも生きている。
だが、あれは嘘じゃなかった。
少なからず、フロルはイヴリンの死の可能性も、理解した上であれを行ったのだ。自分は、イヴリンと結婚しようと、そう考えていたのに、この窮地を自分の切り札にしようと利用したのだ。
フロルはヤンやその愛すべき一党が生きてこの戦争を終わらせるため、そしてヤンを殺させないためにこの世界を生きてきた。フロルも自分が転生したのは、そのためなのだと信じている。それを信じてフロルは赤ん坊の頃から数十年間生きてきたのだ。
それが今揺らぎ始めていた。
前世でもいなかった、最愛の女性が出来て、彼女との生活が幸せで、そんな人生に未練ができてしまい、フロルは迷い始めていた。
??俺は、何がしたいんだ?
フロルは立ち上がって、部屋を出た。
艦はまだひっそりとしていたが、今すぐ会いたい人がいたのだ。
***
帝国宇宙艦隊司令長官グレゴール・フォン・ミュッケンベルガー元帥は作戦会議を前にして、考えていた。彼の手にあったのは、情報士官から取り寄せた敵艦隊の偵察報告書であった。敵の輸送船団をに遭遇した偵察部隊が深追いをし、逆に艦隊に消し飛ばされた旨も書かれていた。ミュッケンベルガーはその記述に一瞬眉を顰めたが、ただそれだけだった。敵艦隊を兵糧攻めできたかもしれなかったが、彼にとってみればそのような姑息な手段は取りたいとは思えないものだったのだ。
それよりも、彼が考えているのは、敵艦隊の陣容であった。
敵防衛部隊は三個艦隊。数の上では帝国軍の侵攻部隊とほぼ同数の艦数であった。敵の総司令官であるラザール・ロボス元帥は前線に姿を現せてはおらず、敵艦隊の指揮はその三艦隊のいずれかの艦隊司令が代理に務めるであろう、と記述されている。
問題は、その三個艦隊の司令官なのだ。
アレクサンドル・ビュコック中将。ウランフ中将。ラウロ・パストーレ中将。この中で一番若いのはパストーレ中将。目立った功績もなく、コネで成り上がった者であるという噂は、帝国の軍偵によって報告されていた。恐らく、このパストーレなる者が三個艦隊の中心を担うことはないだろう。恐らく、ビュコ
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