グランド・カナル(下)
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プの顔は皮肉と剛胆を混ぜ合わせたいつもの顔のままであり、フロルにしても少しの狼狽も見せていなかった。
「貴様、嘘をついたのか」
「いいだろう、これくらいのペケ印は君たちにとっては日常茶飯事じゃないのか」
「そういう問題じゃない! おまえはあの時、すべての責任は自分で被ると言っただろう!」
「実際被ったさ。俺は自分の女を失いかけた」
「それはおまえの自業自得だ!」
「正直言えばな」フロルは至近にあるシェーンコップの顔に向かって言った。「今回、上層部はグランド・カナル事件の方に手一杯で、薔薇の騎士のことや酒の浪費についてはまったく気にしてなかったんだよ。だから、俺から薔薇の騎士の責任問題を提起して、今回の処分を引き出した」
シェーンコップはここまで聞いて、その握りを緩めた。
「??おまえ、また何か企んでいるな」
フロルがここまでするのは、薔薇の騎士を陥れんとしてではないだろう。そんなことをする意味がないのだ。フロル自身が、同盟軍の誰よりも薔薇の騎士を気に入っているのだ。
「シェーンコップ、おまえたちはもうそろそろ第5艦隊から下ろすつもりだった。だから、今回は渡りに船だった。もちろん、初動段階では、あの作為的な浪費も立派な理由付けだったわけだが、これに流用させてもらっただけだよ」
「はっきり言え」
「薔薇の騎士にはもっと役立てる場所がある」
シェーンコップはもう一度拳を握ってフロルの頬を殴った。それは全力のパンチだったから、フロルは吹き飛んで壁にぶつかった。そのままずるずると座り込む。
「それは貴様が決めることではない。薔薇の騎士が決めることだ」
「俺の下にいたいってか?」
シェーンコップは沈黙したが、それは正解と言っているようなものだった。
「バカ野郎……。俺なんかの下にいてどうするんだよ……」
フロルは呟いて、血の混じった唾を吐き捨てた。
「シェーンコップ、薔薇の騎士は第5艦隊を、いや俺の下から外す。その方がおまえたちのため、同盟軍のため、なんだ」
??そして、ヤンのためなんだ。
第7次イゼルローン要塞攻略戦には同盟最強の白兵戦部隊薔薇の騎士連隊が必要不可欠だった。そのためには、あの時、薔薇の騎士がどの艦隊にも属していないという状況を作らねばならない。現段階でパストーレの第2艦隊に預けられないだろうし、正直、第5艦隊以外で彼らを欲する艦隊はない。だからこそ、第5艦隊から下ろせば、約一年後のあの時まで、薔薇の騎士はフリーになれるのだ。そして、あれがヤンの第2の躍進の始まりだったのだ。
「……も
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