グランド・カナル(下)
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53発にも及ぶ精密集中射撃によって瞬殺されていたのだ。
***
「どうやら間に合ったようじゃな」
ビュコックは横に立っているフロル・リシャール准将に声をかけた。フロルはスクリーンに映っているグランド・カナルの惨状に心臓がぎゅっとなるのを自覚したが、低速度でグランド・カナルがこちらに前進してきたのを見て、胸を下ろした。少なくとも、艦橋は生きているようだった。
「ええ、ぎりぎりだったようです」
「この宙域は一番いる可能性が低かったからの。優先度が低かったわけじゃが、もう少し早くくれば無傷で救い出せたじゃろうな」
「仕方ありません。むしろ、救い出せただけで良かったと言えます」
「うむ。間一髪じゃったな。ではリシャール准将、事後処理は任せられるかな」
「は! 工作艦を前方に。すぐに艦の修理を始めろ! 乗員はすべて運び出せ。負傷者を救護艦に移送。チュン分艦隊に散らばった民間輸送船団に収拾をつけるよう伝達。全将兵はこれを最大限の礼儀を持って遇するように。本隊は周囲の索敵をしつつ、機雷や伏兵の警戒に当たれ!」
フロルは一息で命令を矢継ぎ早に言った。そしてビュコックを見る。ビュコックは一つ頷いた。フロルはそれを見てから、一礼をしてリオ=グランテの艦橋を出た。無論、グランド・カナルの彼女に会うためだった。
結果的に、フロルがイヴリン・ドールトンに再会したのは、それから38分後だった。なぜそれだけ時間がかかったのかは、一つにグランド・カナルの核エンジンが臨界に達っせんとしたからだろう。技術部の短い話し合いの結果、グランド・カナルは爆破処分となった。巡航艦グランド・カナルは2月6日1740時、第5艦隊が見守る中、自沈した。
輸送船団は幸いにも一隻の被害もなく、第5艦隊が保護した。当初は10隻で保護をしようとした船団である。1万隻を越える艦隊はむしろ多すぎるというところだった。ビュコックは自ら民間船団の旗艦に赴き、労いの言葉をかけ、更には帰り道の安全を保障した。もっとも、これは本来して当然という処置であったが、ここに至ってそれが成されたのである。
そのようなごたごたのあと、フロルはイヴリンと再会したが、その時イヴリンは鎮静剤を打たれて眠っているところだった。過度の緊張とストレスによって、一時的に交感神経が失調し、まともな体調ではなかったための処置である。 イヴリンは打撲や擦過傷が見られたものの、身体的には軽傷だった。 フロルはその傍らで長いこと寝姿を見つめていたが、一時間を過ぎた頃、ようやくその場を離れた。
被害は、巡航艦グランド・カナルの死者・行方不明者32名、重傷者48名、軽傷24名であった。重傷者の中には、検査の結果、脳出血が見つかったフェーガン少佐も含まれていたが、緊急手術によって一命を取
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