グランド・カナル(下)
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が満ちる。
目まぐるしく変わる艦の数値と敵の動きを読み取る通信兵。
後部砲塔に命令を伝えようとする砲術士官。
スパルタニアンの発進のタイミングを図る管制官。
イヴリンは死が近づくのを理解した。戦況は圧倒的に不利だ。ただの嬲り殺し。弾薬は瞬く間に消費され、乗員の死傷者が止まらない。
一際、大きな衝撃が艦を走る。
「左舷Gブロック被弾!空気流出。電力系統に出火確認」
「すぐに隔壁閉鎖だ!」
「乗員の退避完了! 閉鎖確認しました!」
「スパルタニアンに命令、右の敵を集中的に叩け。どうにかして2対1を崩すんだ!」
「スパルタニアン一機撃墜、命令は実行不能です!」
イヴリンは戦況データを読み取る。わずか8分の戦闘で情報収集能力が極端に低下していた。レーダーが破壊されたのだろう。左後方のエンジンが既に不能に陥っている。
何度目かわからない衝撃。
イヴリンは手すりから手が離れるのを自覚した。
背中に痛み。
息が詰まる。
目を開けると、まだ艦橋は無事だったが、衝撃で倒れている者もいる。
だがその中で、フェーガンだけが必死に立って、前を見つめている。
「防御中性磁場、次で破られます!」
「後部砲塔! 応答せよ、後部砲塔!」
「スパルタニアン3機とも撃墜されました!」
イヴリンは前を見た。
そこには2隻の帝国軍巡航艦の姿。
ほとんど傷を与えたようには見えなかった。
フェーガンの顳かみの横を血が流れている。
そして、敵の砲塔にビームの光が灯る。
2艦合わせて12の砲塔に。
グランド・カナルは既に半数の前部砲塔が破損している。
防御ももたない。
イヴリンは目を閉じた。
??フロル……。
??フロル!
艦橋に光が満ちた。
敵巡航艦2隻の爆発光だった。
猛烈な光が過ぎ去ったあと、艦橋には沈黙が満ちた。
各種の機器は警告音を続けていたが、敵艦反応は消えていた。
さきほどまで死神の斧のように振り上げられていた死が、突如消え去ったのだ。誰もが唐突な展開についていけなかった。だが、一人、また一人、正気に戻っていった。
「え、生き残ったのか?」
「おい、敵艦はどこに行った?」
「索敵どうなってるんだ!」
「レーダがやられていてまったくわからないんだ」
「おい、あれを!」
一人が指差したのは前方の生き残ったディスプレイだった。無数の光の粒がこちらに近づいて来る。彼らにはそう見えただろう。その数は百や二百では数えられなかった。
イヴリンは痛む足を叱咤して立ち上がる。
右手が口を抑えた。
涙がこぼれる。
??生き残った!
??私は生きてる!
それは、同盟軍第5艦隊12604隻の威容であった。
敵は、
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