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【旧】銀英伝 異伝、フロル・リシャール
グランド・カナル(上)
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たい所だが、そもそも俺は使わんし、俺の部下も俺並みの腕前というわけじゃない。そうだな、酒にしよう」
 シェーンコップは笑いながらそう言った。
「いざという時は腕を借りるかもしれん。その時は、頼む」
「ああ、帝国の人間は酒に強いんだ。二日酔いなんぞする軟弱者はいないから気にするな」
 こうして薔薇の騎士(ローゼンリッター)に大量の酒が運び込まれた。その時、薔薇の騎士(ローゼンリッター)連隊は2500人を要していた。そして、彼らは、一個連隊で一個師団に相当する酒豪であることも証明したのである。



***



 軍隊において酒、というのは重要な物資の一つである。そもそも娯楽の少ない軍隊に置いて、酒は誰もが好む嗜好品なのだ。むろん、アルコール依存症になるほどの者はいなかったが、戦いのあとに酒が振る舞われるのは軍隊の慣例であり、軍隊と酒は切っても切れない関係にある。かつて同盟において潔癖性の国防委員長が軍隊における酒の配給を禁止したことがあったが、管理できない悪酒が出回り要看護者が続出したり、酒に変わる娯楽としてサイオキシン麻薬が広まったりしたために、撤回されたということすらある。多分に、酒不足は看過できるものではなかったのだ。
「わかった、それで、いったいどうするというんじゃ」
 フロルからおおまかな説明を聞いたビュコックは苦笑しながら頷く。
「この空域は、未だ同盟の支配下です。敵の大規模、中規模部隊は動けません。せいぜい哨戒部隊ですから、艦数は2、3艦程度でしょう」
「ではこちらも3艦一組で動かす。それでいいかね」
「第5艦隊全部隊は収拾がつかなくなります。チュン少将ならば上手くやってくれるかと」
 ビュコックはそれに頷いた。こうして、第5艦隊は前線に向かう足をしばしとめ、彷徨える民間輸送船団の捜索を始めたのである。





















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