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【旧】銀英伝 異伝、フロル・リシャール
グランド・カナル(上)
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トをして驚きを隠せないほど、フロルの形相は凄かった。目の下に出来た隈や、そのくたびれた顔は、フロルがずっと働き詰めであることを如実に物語っていた。

「フロル、その顔はどうした。夜のお務めに励みすぎたか?」
「悪いが冗談を言う気分じゃない」
 それでも冗談の一つも飛ばすのが、シェーンコップという男だった。
「民間輸送船団の話は聞いているか」
「ロボスのありがたい訓令もな」
 ブルームハルトは遠巻きにそれを見ていた。
 むろん、彼も知っている。シェーンコップ自身がそのことを愚痴っていたのを聞いていた。薔薇の騎士(ローゼンリッター)連隊は帝国からの亡命者である。で、あるからして帝国と同盟の長所も短所も知っている。そして誰もが多かれ少なかれ同盟軍の現状に辟易しているのだ。
「民間輸送船団の護衛部隊は、一隻を残してすべて引き返したそうだ」
「ふん、さすが民主主義の国だな。誰よりも自分が可愛いらしい」
「イヴリンが乗っている」
 シェーンコップは目を細めた。シェーンコップはかつてヴァンフリートでフロルに自分の女を救われていた。そしてもちろん、フロルにイヴリン・ドールトンという美人の連れ合いがいたことも知っていた。破局したという話も聞かない。
 ならば、フロルの女が危ない橋を渡っていることも理解したのだ。
「……それで、いったいどうした」
「救出する。このまま放っておけば、帝国の哨戒部隊にやられる。こんなところであいつを失うわけにはいかない」
「だから、俺たちに何をしろというんだ」
「……第5艦隊の物資、何か一種類でいい、使い切ってくれ。いや、使い切らなくてもいい、明らかに不足になるまで使い込んでくれ。理由付けや責任は俺が請け負う」
 シェーンコップはその時点でフロルの思惑を見抜いた。フロルは不足物資の補給、という名目で第5艦隊を動かすつもりなのである。
 そしてそのためには何かを不足させる必要がある。
 だが現段階では第5艦隊は節約、というなの統制の元に何もが安定量揃っていた。それはフロルの当初の試みが裏目に出た形であるが、このまま日をおいても、不足することはないだろう。そこで頼れるのは浪費をしてくれる部隊である。これは薔薇の騎士(ローゼンリッター)しかない。元から軍上層部にとって目の上のたんこぶである薔薇の騎士(ローゼンリッター)なら、多少の無茶をしても怒られる程度で済む。そもそもそれくらいの不祥事なら今までに何度もしでかしているし、それを気に留めるような集団ではない。もしこれが一般部隊だったらば隊長の降格というのもありえたが、政治的意味合いの強い薔薇の騎士(ローゼンリッター)ならその心配がないのだ。
「ふむ、それは楽しそうだな」
「何がいい。何でも浴びるほど使わせてやる。弾薬か、飯か?」
「避妊用具、とでも言い
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