グランド・カナル(上)
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かった。だが理性を手放した者の目ではない。
「我々のとある部隊が物資を使いすぎまして、急ぎ補給が必要になったのです。我々が補給を必要としていれば、輸送船団と合流するのはおかしいことではありません」
「とある部隊、とはどこの部隊だね」
ビュコックは怪訝な顔をした。ビュコックとフロル自身が、第5艦隊に節約を徹底させたのである。間違ってもそんな浪費する部隊があるとは、思えなかったのである。
フロルは言った。
「薔薇の騎士です」
***
時は遡る。
第5艦隊には同盟で最も勇猛をもって知られた白兵戦部隊がその麾下に加わっていた。
ワルター・フォン・シェーンコップ大佐率いる薔薇の騎士連隊である。
彼らは帝国からの亡命者子弟で構成された白兵戦専門の特化部隊であり、その戦闘能力は一個連隊で一個師団に匹敵されると言われるほどである。だが、その性質上、同盟軍内部でも嫌煙されることの多い連隊であり、歴代の連隊長の半数が帝国に再亡命していることもそれに拍車をかけていた。
だが、今代の薔薇の騎士はとある准将によって手厚く遇されていた。言うまでもない。フロル・リシャール准将である。彼は自ら積極的に薔薇の騎士と普通の陸戦部隊との確執を取り払おうとしていた。共同訓練の実施や、部隊対抗のフライングボール大会の開催などである。それは彼が第5艦隊に戻って来た時からずっと行ってきたことであり、おかげで第5艦隊において薔薇の騎士はかつてほど異質な存在とはなっていなかった。
無論、その力量差ゆえに勝敗は常に薔薇の騎士に上がるのだが、彼らは彼らで同じ人間であり、気持ちのいい連中であることを冷静に理解した将兵も多かったのである。
もっとも、そのおかげでより多くの青年将兵たちが自らのガールフレンドをあ《・》の《・》男《・》に奪われたという苦情がフロルに届いてたが、彼は溜め息を吐くに留めていた。
そんなフロルが、薔薇の騎士連隊旗艦を訪れたのは、1月31日のことである。
「あ、フロルの旦那、お久し??」
「シェーンコップを呼んでくれ」
ライナー・ブルームハルト大尉は薔薇の騎士の若手の中でももっとも有能な人間の一人だった。連隊長であるワルター・フォン・シェーンコップ大佐、カスパー・リンツ少佐、カール・フォン・デア・デッケン大尉と共に薔薇の騎士連隊の黄金四重奏と呼ばれている。実力ともにトップ・フォーの一人だった。フロルも名誉隊員として時折、訓練に参加しており、もちろん顔見知りである。
そのブルームハル
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