情報戦の海
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握しているわけではない。恐らくフロルが把握していない情報部員も何人もいるだろうが、その中のうちの一人が、恐らくラオ少佐なのだ。
フロルがラオ少佐のあまりの影の薄さに疑問を持ったのは、彼が将来アッテンボローの元で主任参謀を務めるほど有能だったことを思い出したからである。それほどの人物が、今の第5艦隊では凡才の一員に溶け込んでいる。
??なぜ?
歴史とこの世界が違うから、というのは安直な帳尻合わせであった。もし、そこに原因を求めるとしたら、それはラオが有能を隠している、つまり能力の出し惜しみをしているということになる。だが、それこそ大きな疑問を残す。いったいなんのために、第一線で働く艦隊に勤めながら、全力を尽くさないのか。
そこから、もしかして故意に目立たないようにしている、という可能性に気付いたのだ。そして彼が第5艦隊に赴任したのは、フロルが初めてここに赴任したすぐあとであった。
諸々の状況と推測によってフロルが導き出したのは、ラオが情報部の人間という可能性。
そしてそれを寄越したのは、恐らく??
「グリーンヒル大将か?」
ラオはその言葉を聞くと、一度視線を外し、大きく溜め息を吐いた。そして顔を再び上げた時には、顔つきから変わっていた。目が鋭くなり、まとっていた雰囲気が変わったのだ。
「フロル准将がいつ気付くか、この4年??まぁ准将がヴァンフリートの基地に行っていた間を除いてですが??ずっと戦々恐々としていましたよ」
「やっぱりか」
フロルは納得した。グリーンヒルはフロルとの初対面から、フロルを要注意人物として警戒していたのである。そして恐らく、怪しいフロルを探るために配下の情報部員を送り込んだのだ。
フロルは情報部の大半を把握している。だが、その彼以上に情報部を掌握しているのはその部長たるドワイト・グリーンヒルなのだ。
「ですが、よく気付きましたね。私の演技も、経歴も、ほぼ真っ白だったと思いますが?」
「そこだよ、あんまり真っ白でね。逆に怪しくなったんだ。それで、いろいろとね」
最初のきっかけはフロルの記憶だったのだが、それを言っても誤解されるだけである。フロルは口にしなかった。
「それで、私をどうしますか? グリーンヒル大将への手駒に使いますか?」
「私としてはグリーンヒル大将とは今後もいい関係を続けていきたいからね。特に何かをしようとは思わない。だから、これは個人的なお願いなんだが、私の私的な調査活動に動いてくれないかな?」
その言葉にラオは驚いたような顔をしてから、苦笑した。
「私は既にグリーンヒル大将の私偵ですが」
「かけもちでも、私は構わないさ」
「まったく、あなたは不思議な人だ。この4年間、ずっとそう思ってましたよ」
「ああ、なんとなく知っていた」
「で、調べて欲しいという
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