情報戦の海
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意味を持つ。ただ兵士の生存活動に必要なだけではなく、その士気に大きく関わってくるのだ。
ロイエンタールの言葉を借りるのではないが、古来飢えた軍隊が勝利した試しはない。それに制限をかけるのは最終手段というものだった。
フロルはリオ・グランテの司令部付きの首席幕僚になっていた。階級が准将になり、それだけの権力が備わったのである。その地位を固執して求めたことはなかったが、傍目からは順調な出世と見えるであろう。現在、第5艦隊はビュコック提督の元、非常に充実した戦力を有していた。一つにはビュコック提督の人徳というものもあったが、有能で人間的にも合格ラインを越えた者が多かったのである。更に一兵卒上がりの宿将、ということで兵士たちからの支持も大きかった。ビュコック提督も”老練”の一言に尽きる熟練の戦術眼、指揮能力を有し、同盟でも屈指の名将だった。
その下をさせるのは数個分艦隊。チュン・ウー・チェン少将は年明けに艦隊を離れ、元いた士官学校の教授に戻っていた。戦力の低下は否めなかったが、さりとて作戦行動に支障を来すほどではない。同盟有数の精鋭部隊なのである。
そんな第5艦隊司令官を補佐するのが、フロルたち幕僚たちの仕事である。フロルが首席幕僚であり、その下にラオ少佐以下数名の士官が控えている。
そしてハイネセン出向から1週間経ったその日、フロルはラオ少佐を呼び出した。
「ラオ少佐、実は貴官と話したいことがあってね」
「はぁ」
ラオはどこか魯鈍な目を向けてフロルに頷く。普段は幕僚としてそれなりに使える男であるが、どことなく覇気のないところがある。少なくとも、普段、フロルからはそのように見えている。
「君はどれくらいこの艦隊いたか、聞いていいかな」
フロルは彼の個室に呼び出したラオに、コーヒーを入れてやってから椅子を勧め、いかにも平凡な質問をしてみせた。もっともフロルには目論みがある。
「4年前からです、准将」
「それは、僕が初めて第5艦隊に来た時だったかな」
「……ええ、そのすぐあとに」
フロルはにやり、と笑った。それは会心の笑み、というよりは人のマジックを見破ってやった時、子供が浮かべるような笑みだった。
「私は君とそれからの付き合いのはずなんだが、どうしてかまったく君に対する印象が薄いんだ。本当に、そんな昔から一緒だったか、と悩むくらいにね。最近それに気付いたんだ。不思議だろう?」
フロルは笑みを浮かべながらなんてことはないような口調で言っていたが、ラオの方は心なしか耳が赤くなっているようだった。顔はまったく変わらないが、どうやら発汗もしている。
「君は、情報部の人間だろう?」
それはフロルがたった一人でやった調査の結果だった。フロルは第3課を指揮する立場にあるが、当然情報部の全てを把
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