情報戦の海
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に進軍中ってな」
「ここ数回同盟の負けが続いたからな。バランスをとるために同盟に有利な情報を流したか」
「引き続き、気をつけておく。押っ取り刀の帝国諜報部も、もうそろそろ動き始めるだろうしな」
「任せる」
バグダッシュはそう言って、デンホフから姿を消した。
フロルが宇宙に旅立ったのは密談の3時間後。そして周回軌道上で第5艦隊に合流したのは、1月31日に日付が変わった頃合いであった。
「久しぶりじゃな」
アレクサンドル・ビュコック中将は艦橋に現れたフロルに対してそう言ったが、それは短すぎる休暇だった。二人が第6次イゼルローン攻略戦を終えて別れてから、まだ1か月しか経ってないのである。本来ならば、もっと長い期間が空いてあるべきだったが、今回は帝国の事情で攻めて来るのだ。こちらとしては、それを防衛するしか道はないのである。
「お久しぶりです、一か月ぶりでしょうか」
「カリンからのケーキは家内と二人で頂いた。大層美味しかった、とカリンに伝えておいてくれ」
「はい、わかりました」
フロルは笑みを浮かべながら快諾した。カリンは昨年末のクリスマスにビュコック家に特製の手作りケーキを届けていた。一からカリンが考え、作ったケーキである。フロルの適切なアドバイスがそれに加わり、非常に美味しいものになった。今のところ、カリンの趣味というのはケーキ作りと料理作り、それにフライングボール観戦らしかった。らしい、というのはヤンから聞いた話で、ユリアンが出場するフライングボールの試合をよく見に行っているという。どうやら、ユリアンがカリンにアプローチを成功しつつあるらしい。
「カリンはどうしたのかね?」
「デンホフに、預けて来ました」
「そうか、ご両親にか」
そう言うとビュコックは表情に陰を滲ませた。ビュコック家には本来二人の息子がいたのだが、その二人ともが戦争によって失われていた。息子が自分より先に死ぬ不幸を、今もこの老人は感じている。フロルはその事実に胸が痛んだ。もし、カリンが自分より先に死んだら、などという馬鹿げた想定を考えてしまい、彼の胸に激痛が走ったのであった。
「彼女、そう、おまえさんのパートナーは?」
「今はアレックス・キャゼルヌ准将の元にいます。後方勤務本部にいるかと」
「そうか、しばらく会っておらんのじゃないのかね?」
「ええ、半月ほどは。でも、お互い忙しい身ですからね」
イヴリン・ドールトン大尉はヴァンフリート4=2基地での戦いまで、後方勤務の専門家シンクレア・セレブレッゼ中将の副官としてその軍務を果たしていた。だが、あの戦いでセレブレッゼ中将が軍務遂行不能に陥ってしまったため、その後処理を任されていたのである。そして昨年末をもってセレブレッゼ中将は退役し、予備役扱いとなった。
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