情報戦の海
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とわかっている諜報員を消し、その代わりに入ってくるであろう新たな諜報員が厄介だった。そもそも諜報員を見つけ出す、というのは非常に大変な苦労を費やす。フェザーンや帝国の密偵もバカではない、簡単に尻尾を出すようなヘマはしないのだ。だから、それを見つけ出すのは砂の中から米粒を取り出すような労苦だ。そこで、一般的には敵の諜報員を泳がせて、その行動を監視下に置く、というのが常套手段なのである。
だがフロルはそこで、セオリーを曲げた。
敵の諜報員を一気に排除したのだ。
その狙いは敵の視線を同盟に引き寄せることだった。特に、フェザーンの視線を。今まで同盟軍はフェザーンからもたらされる情報をほぼ一方的に受け取り、それを重要な国政の資料としていた。だが、その態勢から離脱を図るのだ、という意思をフェザーンに気付かせ、その反応を見ようとしたのである。フェザーンは今まで情報の管理と統括によってその繁栄を支えられて来た星である。原作では終始その情報によって同盟は振り回されていた。
『そうはさせない』
そういうメッセージを送りつけたのだ。
「フェザーンの様子は?」
「ここ一か月は蜂の巣を突いたような騒ぎだったぜ。まさか自分たちが一杯食わされると思ってなかったんだろう。だが既に立て直しをかけている。早いよ、さすがフェザーンだ」
「まぁ、そんなとこだろうな」
フロルは小さく溜め息を吐いた。ベンドリングの参加によって、情報戦の教育と運営が著しく捗っているのは確かだが、それでも長年の経験とかそういうものは未だフェザーンにあるのだ。一筋縄ではいかないだろう。
「そんなとこ? だから俺は消すのが反対だって言ったんだ。おかげでまた諜報が難しくなるぞ」
「困難な者は新たな人員と交代させる。今回は相手にこちらの存在を気付かせることが大切だったんだ。あちらさんは必ずなんらかの反応を見せる。それを見極める必要があるだろうな」
「今のところ、大きな動きはない」
「今度の出兵に関しての情報は?」
「俺たちの部下たちは働き者だよ。フェザーンで軍事物資が値段を上げている。帝国の軍関連施設の警戒レベルも上がっているようだ。帝国軍中枢コンピュータにハッキングをかけた猛者によると、確かに作戦は進行中らしい」
「随分な凄腕がいるもんだな」
「前からいた諜報員の一人さ。集団としての練度は低いが、個々の能力はそれなりのものなんだぜ、同盟も」
フロルは何より目の前の男を見て納得した。フロルは大まかな方向性と指示は出したが、実務においてはバグダッシュの負うところが大きかった。その能力は非凡である。グリーンヒルが抱え込むだけはある、というところだった。
「フェザーンはなんと言っている?」
「今回はまともな情報を言っている。イゼルローン要塞より3万有余の艦隊が出撃、同盟
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