帰郷
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ッタレの政府のせいで、3個艦隊で敵とぶつかることになるだろうというフロルの言葉は現実味があったしな。
とウランフは考えていた。それにはフロルが情報部と仲が良い、という噂もが信憑性を持たせている。政府は先の第6次イゼルローン攻略戦で流された無為の血の量に怯み、この侵略に戦力を出し惜しみしているのだ。ウランフは改めて次の戦いの困難を思った。帝国と同盟の艦数はほぼ同数。わずかに同盟が劣っている程度。もしこちらがヘマをすれば、帝国が勝つだろう。そして、差し当たって勝つためには、第4艦隊だけが不安だった。総指揮をビュコック提督が執るならば、自分が第4艦隊のお守りをする必要があるだろう。
??これだから、おべっかで出世する軍人は手に負えんのだ。
ウランフの愚痴は、留まるところを知らない……。
さて、一連のことをし終えたフロルは、唐突に呼び出しの電話を食らった。実家からの連絡である。フロルとカリンの家族でもある、シェットランドシープドック、エリィの母犬の、危篤の連絡だった。
フロルとカリンが、フロルの生家に戻ったのは、1月29日のことである。
「イザベル、死んじゃうの?」
カリンは胸にエリィを抱きしめながら、フロルに聞いた。微かに瞳に涙が溜まっているのは、カリンがフロルの実家で老犬イザベルに会ったことがあるからだったろう。
イザベルは人間の年齢で言えば80歳を越える、おばあちゃん犬だった。イザベルが生んだ、最後の仔犬の一匹がエリィだったのだ。フロルはスクールの学生の頃、一緒に遊んだイザベルのことを思い出しながら頷く。二人と一匹は、高速鉄道の個室で、首都星ハイネセンの第二都市デンホフに向かっていた。フロルは目の前の座席に座っているカリンの手を握りながら、老犬のことを思い出していた。
「もうおばあちゃんだったからね」
「エリィ……お母さん死んじゃうんだって」
エリィに言葉がわかるはずもなかったが、心なしかその瞳に哀しみがあるように見えた。あるいは彼女は彼女で、動物的な超感覚でそれを悟っているのかもしれない。科学は無限に発展していたが、未だ、動物のそういった勘のようなものは解明されていなかった。
「エリィ、可哀想……家族が死んじゃうなんて……私とおんなじ……」
「だけど、カリンには俺がいるだろ?」
フロルはカリンの頭をそっと撫でる。カリンはそれに頷いたが、顔は沈んだままだった。一度、カリンをフロルの実家に連れて行ったことがあったが、その時ずいぶんとイザベルと遊んでいたことをフロルは思い出していた。
「カリン、エリィも悲しいかもしれないけど、エリィにはまだ俺とカリンという家族がいるんだ。だから、みんなで幸せに暮らそう、な?」
フロルは優しく微笑みながら話しかけた。
カリンは涙を手の
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