暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
SAO
〜絶望と悲哀の小夜曲〜
まさかの一泊
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あるのは、決して《攻略》ではなく《自分の安全》なのだから。

この事から考え見るに、この少年は特異だと認めざるを得ない。

安全地帯に寝泊まりするなどという芸当をできるのは、よっぽど自分の腕に自信がある、つまり大手攻略ギルドの幹部クラスか、あるいは…………

《六王》か………。

──まさか、ね。

馬鹿げた思考を払い落とすべく、ぶんぶんと頭を振る。だが、一度鎌首をもたげた思考はなかなかこびりついて離れない。

だいたい、《六王》は全員が全員、特異な者が多いと伝え聞くではないか。眼前の少年の武器はまさに、特異そのものではなかったか?

そして先刻、あのバケモノと対峙したときの、あの眼。あの瞳。

あれはまるで、まるで………

まるで?

まるで……

獲物を狩る肉食獣の眼?

違う!あれは……まるで………

まるで……アリを踏み潰すような、そんな無感情の眼………

ぞくりと寒気が走る。意味もなく、手に汗がじわりと滲む。眼前の自分のアイテムの火打ち石と格闘している少年。

こちらに背中を向けているのに、その背中さえもなぜか別次元の生き物に見えてしまう。

怖い──

こわい──

コワイ──

息が自然と荒くなる。手が冷たい。

「ね、ねぇ…………レ───」

「リズねーちゃん」

遮られた。まるでこちらを見ていたようなジャストタイミング。

少年は振り返る。

その顔には、今までと同じようにあどけない笑みが浮かんでいた。

「僕は人間、だよ?」

その声に、あたしはただただ頷くことしかできなかった。










鍋で沸かしたお湯から作った、ほのかにラベンダーの香りのするお茶を啜りながら、とりあえず二人してテントの中にもぞもぞ入ってみた。

野営用の大きなテントは、あたし達二人にはもったいないほどの充分な広さがあり、寝るのに不自由はなさそうだった。

飲み干されたマグカップをレンのほうに突き出す。数秒後、並々とお茶を入れられて突き返されてきたそれをずずーっと飲み干す。レンの料理スキルが高いのだろうか、このお茶、なかなかにうまかった。

そんな無意味な循環をどれくらい続けたのであろうか。

その間、ぽつりぽつりとレンは語ってくれた。

二十五層で守れなかった、黒猫のこと。

半分自暴自棄で人を殺しまくったこと。

壊れかけていた自分を守るために死んだ女性のことを。

そして────


自分が、《冥王》だと言うことも。

それを聞いても、あたしの心は不思議と震えなかった。むしろ穏やかといっても過言ではないだろう。

なぜか、なぜだか、目の前にいる少年が、怯えて縮こまる小動物のように見え
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