卒業祝い
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「それで、俺の卒業を祝いに来てくれたのか、ジェシカ?」
「ええ、近くでコンサートがあっから、その帰りよ。それにしても、よく先輩も卒業できましたよね?」
フロルは実技などは抜群に得意なのだが、座学は不真面目極まりないので、学年の総合順位では中くらいがいいところである。
「なんでみんなそう言うんだ? そんなことを言ったらヤンの方が危ないじゃないか」
「それはそうですが、私のことをいちいち引き合いに出すのはやめてくれませんかね、先輩?」
「だってこの中で一番、真面目に不真面目なのはおまえだろう」
フロルは不満顔である。
ジェシカ嬢はそのあと、この男だらけの集まりに同席した。椅子をどこからか持ってきて、ワインを飲みながら談笑中である。
「そういえば任官先はどこになった?」
「第四艦隊の分隊に配属されるようです」
「そうか、するとパストーレ准将かな。気をつけておけよ」
「まぁあの人はよくも悪くも政治家と仲がいいですからね」
フロルは静かに頷く。パストーレ、そうだ、第4艦隊を率いてアスターテで戦死する無能者だ。確かトリューニヒトとも仲が良いはず。
「大丈夫ですよキャセルヌ先輩! フロル先輩はそんな簡単に死ぬような男じゃないですよ」
アッテンボローがほろ酔いで言う。まだ飲み慣れていないのだろう。考えてみれば士官学校一年生だからまだ未成年である。
「こいつが殺しても死なないような男だというのには賛同するがね」
「おい、アッテンボロー。おまえ、最近出てきたトリューニヒトって政治家、どう思う?」
「え? トリューニヒト? ああ、あの薄っぺらい愛国主義者ですか?」
「おまえの親爺さん確か新聞記者だろ、なんか言ってなかったか?」
「親爺とは会っても喧嘩しかしないもんでね!」
「どうしたフロル、その政治家が気になるのか」
キャゼルヌが目を光らせた。キャゼルヌはこう見えて後方任務の若きエリートなので、裏の情報にも詳しい。今後、人事のこともキャゼルヌに通せば色々と助けてもらえるだろう。
「俺が世界で一番嫌いな政治家ですよ」
「それはまた穏やかじゃないな。フロルがそこまで言うとは」
「私も好きじゃあないですね、ああいう巧言令色な政治家は」
ヤンも助け舟を出す。ラップも頷いていた。
「でも、なんでそんなに嫌いなの?」ジェシカが問う。「まだそんな凄いことをやったわけでもないのに」
「……むしろ世間の受けはいいくらいだよな……」
フロルは考える。これから自分はいったいどのように動けば良いのか。今後、恐らく帝国の動きは活発化し、同盟軍はなかなか勝てないだろう。そして政治家どもの権力が強くなる。同盟の社会構造は歪みを増大させるはずだ。国防族議員が軍部に大きな影響力を持つようになるだろう…
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