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【旧】銀英伝 異伝、フロル・リシャール
卒業祝い
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れで子供に愚痴るような亭主になるんです」
「なんだ、妙にリアルなことを言うな、フロル」
「いえいえ、ただの予想ですよ」

 これから3年後に結婚することを、フロルは当然知っていた。確か上官の娘だったはず。あんな美人な嫁さんもらって二人も可愛い娘を授かる男なのだ、キャゼルヌは。全身全霊でキャゼルヌ夫人に加力しようというものだ。

「ジェシカなぁ。まぁ最近は何も言ってこないからな、たぶん興味もなくなったんだろう。どうせ、動物園の猿でも見るくらいの興味だったのさ」
「そうですかね? フロル先輩、結構モテるでしょうに」
「ラップ、こいつにお世辞はよせ。調子に乗る」
「キャゼルヌ先輩、こう見えても俺は自分の容姿に自信があるんですがね」

 フロルは人に言わせれば、見ようによってはハンサム、と言われる容貌である。10人の女性が見れば、2人くらいは興味を持つ、という程度という話だが。
 身長は184センチ。旧欧州人の血が入った両親から、それに見合った身長の息子が出来た計算で、体はいたって健常。軍隊格闘で一通り鍛えられた体は、引き締まった成年男子として遜色のないものである。もっとも、ヤンほどの怠け者でない限り、ある程度はこうなるだろう。事実、アッテンボローもラップも、体格としては既に軍人のそれだと言える。髪は薄い茶色。濃く入れすぎた紅茶の色、とはヤンの表現で、「つまりフロル先輩ももうちょっと薄まればいい具合」という意味である。

「おまえは10人が見たら2人が興味を持つ、程度だろう。俺なんかは10人の女性がいたら4人は声をかけるぞ」
「キャゼルヌ先輩の場合は、10人の女性士官でしょう。それに公平な判断をするには、襟の階級章を外していただきたいものですな」
「まぁまぁ、二人とも」
「そういや、ヤンとラップこそどうなんだ? ジェシカと仲いいんだろ?」
「ええ、まぁ、それなりに」
「……そうか、まぁよろしく言っといてやってくれ」


「誰に、よろしくですって?」
 一同はその声に驚いて振り向いた。ジェシカ・エドワーズの声だったのだから。
「やぁ、ジェシカ」
「あら、不良士官候補生……もとい不良少尉殿じゃないですか。ご卒業おめでとうございます」
「おう、ありがとな」
「ジェシカ、こんばんは」
「素敵なドレスだね、ジェシカ」
「ヤンもラップもありがとう。あなたがアッテンボローくんね、話は二人から聞いてるわ。すると、あなたが事務次長の??」
「アレックス・キャゼルヌだ。こんばんは、お嬢さん」
「初めまして、キャゼルヌ大尉。ジェシカ・エドワーズです」
「どうしてここがわかったんだい?」
 フロルが尋ねる。ここは三月兎亭の近くのバーだった。
「偶然よ、偶然」
 ヤンとラップはお互い目を見合った。そんな偶然があるものか、と
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