『彼』とおまえとおれと
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るよ?」
「嫌がってない!」
日紅ではなく犀がむすりとした顔で言い返す。
日紅はなるべく教室や人前では付き合うことになったと言えど態度を変えたくないのに、犀が青山の前で日紅を抱き込むから恥ずかしくて青山の目も見れない。
「山下さん」
青山が日紅を見た。今日もきらきらしている。日紅はいまだに信じられないのだ。この学校のプリンス青山が日紅のことを好きだなんて。第一何にも確かなことを言われていないのに犀がこうして青山のところに来ているのも勘違いだったらと思うと輪をかけて恥ずかしい。
「山下さんは木下の事をどう思ってるの?」
日紅は覚悟を決めた。もし本当に青山が日紅を想っていてくれているのであれば、曖昧な態度は青山に対して失礼だ。日紅の勘違いだったら日紅一人が笑われるだけで済む話だ。
「青山くん。あたし、犀が好きなの。今でも青山くんがあたしのことを?好き?だなんて信じられないけど、犀と付き合うことになったから、ごめんなさい」
「というわけだ」
犀が日紅と青山の間に割って入った。
「まぁ、やっと二人が付きあったってことでとりあえず、おめでとう、かな」
やっと?って何。と日紅が思った時、犀が低い声で言った。
「青山。俺はこいつのことが本当に好きだから、軽い気持ちで手を出しているんなら辞めてくれ」
青山はそれにはにこっと笑うだけで答えなかった。
暫く青山と犀は無言の攻防をしていたが、犀がふいっと顔をそらして日紅の腕をとった。
「戻ろう。日紅」
「あ、うん」
日紅は青山を気にしながら犀に腕を引かれるまま続こうとした。
「木下さん」
日紅に青山が声をかけた。
犀に引っぱられながらも日紅は振り返った。
「僕の名前も、清って言うんだ。これから名前で呼んでよ、日紅」
青山清は、にっこりと完璧な笑顔で微笑んだ。
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