事は動き始める
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ているつもりなのだ。
ここに、両者の齟齬があったろう。
トリューニヒトはパストーレの腹心の配下が自分に好意的であると思っていたが、フロルは中立たらんとしている意思が伝わっていると思っていたのだ。
「ちなみに、次の第11艦隊の司令官席が、ホーランドのために空いていたそうだが、そのまま空席になっているようだ。君は誰が良いと思う」
それは准将に尋ねる質問ではなかっただろう。だが、トリューニヒトは聞いてみた。実力を測らんとしていた。もちろん、フロルもこの問題を知っている。フロルがバグダッシュ、ベンドリングと共に広げた情報網は国内海外ともにその規模と精度を増加しているのだ。
「小官の私見ですが、現在同盟は数度の敗戦により士気が落ちています。そのせいで、国内の治安も悪くなる一方です。辺境では、宇宙海賊の類も出ていると聞きます」
マルガレータが引ったくりにあったのも、その余波だろう。
「確かにその報告は聞いている」
「そこで、一時的に第11艦隊を守備隊に編入してはいかがかと」
「! だが、それでは艦隊数が減るではないか」
「しかるべき将官が現れれば、戻せばいいのです。無能な人間にそれを任せて、全滅の憂き目を見るよりは幾分マシかと」
トリューニヒトは視線を鋭くした。そしてフロルの言葉の裏を探ろうとした。そしてあることに気付く。目の前の男、フロル・リシャールは准将だ。中将までは、あと、二つ。
「つまり、寝かせておけと?」
「ワインも寝かせておけば価値が上がります。国内の治安向上、将兵の再訓練、充分に手間と時間をかければ、数年後には精鋭部隊になるでしょう」
これにはフロルの思惑もあった。彼は艦隊数を減らし、将来のアムリッツア会戦を起こさないように暗躍していたのだ。同盟の滅びの歌は、あの戦いでその声を大きくした。あの会戦さえなければ、同盟が滅びることはなかっただろう。あの莫大な損害を防ぐために、彼は情報を収集し、秘密裏に活動を始めていた。帝国の脅威を正当に評価し、安易な作戦を防がんとしていたし、あの戦いで儲けるであろう軍需産業の犯罪を探ってもいた。早いところではロボスの身辺の洗い出しも始めている。そしてその一環で、同盟の艦隊数を減らそう、としたのだ。さすれば、あの戦いに動員される艦隊が単純計算で一つ減ることになる。艦数一万隻、温存できればそれに越したことはない。
だが、トリューニヒトはそう捉えない。
フロルが、自分のために残しておけ、と言っていると思ったのだ。
それはトリューニヒトから見れば、自信家の強弁と見えた。だが、この男は至って冷静に話している。ホーランドのような自己陶酔の色も見えない。この男は、まともに思考してそれを望んでいる。
それに提案自体は異例にしても、理に適っていないわけでもないのだ。長期にわたる帝国
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