事は動き始める
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が遡ること2日。
フロルはトリューニヒト主催の新年パーティーに呼ばれていた。この手のパーティーは将軍レベルの将官になると、割と頻繁に招待されるものである。軍関係のパーティーはもちろんのこと、軍に近しい企業のパーティーや、政治家のものも多い。もっとも、今まで地味にのし上がって来たフロルよりも、エル・ファシルの英雄であるヤン・ウェンリーの方が誘いは多いはずだったが、彼がこういうパーティーに出席しているという話は聞かなかった。ある意味ではヤンという男の人間性がわかろうという話だったが、単におべっかを使うことが面倒だというのがフロルの個人的見解だった。その点フロルは、おべっかやお世辞を彼よりは上手く使いこなす。前世も含めれば人生を50年近く生きているのだ。多少の処世術は身に付こうというものだった。
さすが国防委員長が主催のパーティーである。周りを見ると、軍中枢の将軍クラスが多い。シトレ元帥やロボス元帥はもちろん、グリーンヒル大将も会場の入り口で姿を見かけた。先ほどは第2艦隊のパエッタ中将もいた。恐らく、トリューニヒトに媚を売りに来たのだろう。だが、親トリューニヒトといえば、あの男もいるだろう。
「おお、リシャール准将じゃないか!」
「……お久しぶりです。パストーレ中将閣下」
ラウロ・パストーレ中将、その人である。フロルはかつて、パストーレが率いる分艦隊で勤務していた。史実よりもパストーレが早く中将に昇進しているのも、フロルのおかげ、という話である。とある遭遇戦にてパストーレを助けたことから、フロルはパストーレより高く評価されていた。偏重、と言っても良い。そのことをフロルは喜んではいなかったが、さりとてそれを拒絶するほど子供でもなかった。彼はパストーレの元で、何より彼自身が生き残るために最善を尽くしただけである。
「リシャール准将も、順調に昇進を重ねているようだ。私も鼻が高い」
??別にあなたのおかげではない。
とフロルは考えたが、何も言わなかった。どうにも、パストーレと周波数が合わないのである。もっとも、悪い人間ではない。だが、フロルを苛立たせるのに長けた男だった。
「は、ありがとうございます」
「現在は第五艦隊の参謀をしているのだったかね?」
「はい。ビュコック提督の元で軍務に励んでおります」
「そうか……あの老将から学べる者は多いだろう。精進したまえ」
「は、頑張ります」
??ならまずおまえがしろ。
とフロルは心の中で呟いたが、口に出すようなことはしない。フロルは我慢強いのだ。
『ヤン大佐も、少しは見習って欲しいんですけどね』とはヤンの養い子たるユリアンの言葉である。
「ところで、今日は私が貴官とあのお方の顔つなぎをしてやろう」
「顔つなぎ、ですか?」
「そうだ」
パストーレはまるでそれが自分だけに
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