事は動き始める
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限に活用する装置なのだ。人が自らの思う通りに動く、あの快感。自らが神になったかのような優越感。自治領主になるために、対立候補の閥を内部分裂させ崩壊させたあの時から、ルビンスキーはその甘美な魅力の虜であったのだ。
その彼をして不愉快たらしめたのは、ボルテックの告げた最後の報告であった。
「同盟に潜らせていた情報員からの連絡が途切れているだと?」
「はい、現在諜報網はその機能を30%近く低下させています」
同盟に潜入させていたフェザーンの諜報員、つまりスパイが次々に交信途絶になっているという。ルビンスキーは片眉を上げた。面白からざることであった。
「同盟が情報網の引き締めをしているのか?」
「我々の方としても、帝国の妨害の線を辿りましたが、どうやら帝国の諜報員も次々に排除されている模様です」
「すると、同盟の情報系のセクションか」
「はい、特に軍部に近いところにいた者は綿密にパージされています。どうやら軍部の情報部が策動しているようかと」
「つまらんな。情報部を統括しているのは、誰だ?」
「ドワイト・グリーンヒル大将かと」
「それは形式上の統括者に過ぎん」
そもそもドワイト・グリーンヒルは、ここ数度の会戦の参謀長を務めており、そんなことに構っている余裕はあるはずがなかった。グリーンヒルは軍人としては無能ではないようであったが、かといってそこまでの才気はないはずだった。それなら、もっと階級が上がっているはずである。
「ではその配下が動いているのでしょうか」
ルビンスキーは黙して頭を働かせる。歴代のフェザーンが築いて来た諜報組織は決して脆弱なものではなかった。彼自身、領主に就任した最初の仕事は、帝国と同盟の諜報活動の強化だったのだ。帝国も、同盟も、フェザーンにしてみればまだまだ情報管理体制が甘かった。だが、それを問題視し、行動に移すだけの者が同盟に現れた。ルビンスキー肝煎りの諜報員たちを秘密裏に闇に葬っている。
「……早急に調査しろ。グリーンヒルの周りにいる人間を洗い出せ。調べられる範囲で情報部の動きを探れ」
「はい、わかりました」
「それとフェザーンの情報管理も徹底させろ。同盟が国内の掃除を済ませれば、必ずフェザーンや帝国にその手を向けてくる。決して許すな」
ルビンスキーは地球教の線からも同盟を調べようかと思っていた。これほどの被害を受けたが、恐らく早晩ネットワークは回復できるだろう。問題は、それだけの能力を持った人間が同盟に現れたことである。そして排除して来たということの意味。これはもしかするとフェザーンに対する挑戦状……。
***
シドニー・シトレ元帥は統合作戦本部長として、ビルの本部長室で職務を果たしていた。彼の仕事は多岐に渡る。本来、統合作戦本
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