X'masパーティーはいかが?
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さておき、お嬢さんがもしかしたらヤンに再会したいのではないか、いやいやもしかしたら、お嬢さんもヤン・ファンクラブの会員なのではないか、と愚考した次第ですよ」
「ふむ……、まぁあれと私の死んだ家内はヤンに感謝していたからな。あの時の軍部は、明らかにヤンを英雄に祭り上げようとしていたが、救われた300万市民は事実、英雄視していただろう。まぁ、娘がファンであることには疑問を投げかけるがね」
「すると、今日集まった面々の中に、お嬢さんの知的好奇心をくすぐる相手がいたわけですね。アッテンボローはそもそも知らないだろうし、キャゼルヌは既婚者ですし、もしかして私に興味があったのかな?」
「……だとしたら悪夢だ」
フロルは思わず噴き出した。グリーンヒルも、小さく笑う。
ひとしきり笑ったあと、二人は室内に戻った。グリーンヒルは娘の恋心について、少なくとも意識するようになったはずだった。今はそれで充分だ、とフロルは考えていた。二人の再会は二年も早まった。切っ掛けは上々である。
パーティーのお開きは早かった。子供達もいる、ということで、9時半には終わりにしたのだ。フロルとカリンはこの時のためにとっておいたお持ち帰り用のケーキを各家庭に手渡したのである。一番喜んでいたのはキャゼルヌ家のシャルロットだったろう。ユリアンはカリンからケーキを渡され、顔を赤らめながらお礼を言っていた。
グリーンヒル家にも、ケーキは渡る。フロルは、緊張したような、ほっとしたような顔のフレデリカに近づいた。どうやら、多少はヤンとも話せたようだった。顔の感情の端に、満足が見えた。
「フレデリカさん」
「あ、リシャール准将」
「フロル、でいいですよ」
「……ありがとうございます」
フレデリカはフロル・リシャールという男を、注意深く観察していた。父からは、注意しなければならない男、と言われていたのである。だが、今日のパーティーでは、終始人の良い笑みを浮かべ、子供たちにも優しく接していた。ケーキも美味しかった。そこまでの危険人物には思えなかったのだ。
「ヤンとは、話せましたか?」
だがその評価はこの一言で一変した。フレデリカは頬が赤くなることを自覚する。
「な、なんのことですか?」
「ヤンのこと、好きなんでしょう?」
フロルは優しく笑いかけたが、フレデリカには恐怖を感じさせる笑みだった。
「わ、私は別に??」
「こう見えても、女性の機微には鋭いんです。私以外は気付いていないようですけど、私にはわかります」
これはフロルの大嘘というものであった。フロルは周りの女性全員から、鈍感と言われる朴念仁なのである。だが、付き合いの短いフレデリカがそれに気付くはずもない。フレデリカは本当に、フロルはそういう男なのだ、と信じた。
フレデリ
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