X'masパーティーはいかが?
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…、いや、それはすまん……」
一気に逆上したグリーンヒルはすぐに、落ち着きを取り戻したようだった。
「私が言っていたのは、お嬢さんはヤンと顔見知りじゃないか、ということですよ」
「……どういうことだ?」
「彼はエル・ファシルの英雄です。今では、そんなことを覚えている人間も減りましたが、それでも彼の元には毎週束になってラブレターが来るそうです。まぁ、そんなミーハーな輩はさておき、お嬢さんの場合はもっと直接的にヤンに命を救われている。ヤンもまぁ、欠点の多い男ですが、悪い奴じゃあない。閣下の下で使ってみて、ヤンという男はどうでしたか?」
グリーンヒルはフロルの言葉に考え込んでいたようだったが、フロルの問いにはすぐに答えた。
「近年の知り合った将校の中では、一番有能な男かもしれない、と思っている」
「それは随分、高評価ですね」
フロルは苦笑した。原作では、第6次イゼルローン攻略戦の末期、ヤンは操作卓に脚を投げ出して不貞寝していたために、グリーンヒルの信用を失うはずだったが、フロルの忠告のおかげでそうならずに済んだらしい。
「まぁ、軍人らしくはないし、お世辞にも勤勉とは言えないが、ね」
グリーンヒルは釣られたように苦笑した。彼も『むだ飯食らいのヤン』が全くの虚称ではないことを知っているのだろう。
「それは多めに見てやって下さい。あいつはもともと、歴史学者になりたかったんですよ」
「歴史学者? それがなぜ軍人に?」
「あいつの父が急逝して、遺産もなくなったヤンは、ただで歴史を学べる同盟軍士官学校戦史研究科に入学したんです。そこからが彼の不運でね。やりたくもない人殺しを、させられている」
「人殺しか」
軍隊は、どんなに言葉で装飾しても、人殺しの集団である。何かを守るために、人を殺す。日々有事に備えて教練に励む軍人は、毎日を人殺しの予行演習に注ぎ込んでいるようなものなのだ。
「ヤンは賢いから、それに気付いている。そして苦しんでいる。彼の不真面目な態度は、そのせいなんです。皮肉なもんだ。あいつほど、軍事的才能に溢れる男はいないのに、本人がそれを心底嫌っているんだから」
「リシャール准将がそこまで言うのか」
「言いますよ。私なんて、ヤンに比べればゴミみたいなもんです。ヤンは天才だ。きっと、この宇宙で一番のね」
グリーンヒルはフロルの言葉に驚いていた。自身も、多少なりとも認めるようになったヤン・ウェンリーという男を、このフロルはいったいどこまで信頼しているのだろうかと。人間として信用し切れないところもある、と考えていたが、グリーンヒルはグリーンヒルでフロル・リシャールの有能性も認めていたのだ。その彼が、ここまで全面的にヤンを認めることは、グリーンヒルにとっては意外だったのだ。
「それは
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