X'masパーティーはいかが?
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、人知れず、パーティーの裏側では、密談が実を結んだ。
グリーンヒル父娘がフロル宅に現れたのは、午後7時30分のことである。パーティーが始まって30分、軍人であるヤンやキャゼルヌ、アッテンボロー、イヴリンなどは酷く驚いていたようだったが、グリーンヒル大将自身が、
「今日は無礼講だ。気にせずやってくれ」
と言ったことで、一応の落ち着きを取り戻した。もっとも、みながフロルを睨んでいたが、それを気にするフロルではない。
それよりも艶やかであったのはフレデリカ・グリーンヒルであった。見事なドレスを着こなした、今年士官学校を次席卒業の才女が、明らかに緊張しているのである。フロルは微笑ましくてたまらなかった。父であるグリーンヒル大将も知らないだろうが、フロルはそれが意中の人と再会することへの緊張だとわかったからである。
「フレデリカ・グリーンヒル少尉です。今日は、呼んで頂き、あ、ありがとうございます、リシャール准将」
「フロル・リシャール准将だ。だが、そんな緊張しないでいい。今日はただのプレイベートなパーティーだから。肩肘を張らずに、楽しんで欲しい」
フロルは代表して言ったが、フレデリカの控えめなナイトドレスは彼女の清純さを見事に魅力的なものにしていた。イヴリンほどの色気はないが、若々しい雌鹿を思い起こさせるような活発な魅力があった。
アッテンボローは軽くその美貌に驚いていたが、肝心のヤンは軽く目を開いただけで、記憶を発掘した様子もない。
その微妙な空気を敏感に嗅ぎ取ったのはキャゼルヌ夫人であった。彼女はフレデリカに話しかけ、ケーキをよそって上げたのである。フレデリカもヤンとの再会という一大事から、一度息をつくために、それに手を伸ばし、その美味しさに驚いていた。美味しいものを食べる時の表情が、フロルは好きだった。彼が前世、パテシィエを目指したのも、人の喜ぶ顔が見たいからだったのだ……。
「なぁに、見とれてんの?」
そんなフロルに擦り寄って来たのはイヴリンである。フロルが見ると、頬を軽く膨らませている。フロルは苦笑した。
「そんなことはないよ、彼女にはお相手が決まっているしね」
「あら、本当?」
イヴリンはその声に嘘がないことを聞き取って、すぐに笑顔に転じた。フロルにしてみれば、イヴリンをおいて浮気などできる気がしない。する気が起きないほど、イヴリンが魅力的だというのもあるが、浮気をした時のイヴリンの反応が怖いのだ。彼女は、男への恨みで数万人を死に追いやろうとした女性なのだから……。
だが、その嫉妬や独占欲も、自分に向けられたものならば愛しくて仕方がなかった。フロルはイヴリンを部屋の影に抱き寄せると、情熱的な接吻を交わした。
「どうしたの? 急に」
「いや、可愛いな、と思って」
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