X'masパーティーはいかが?
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も、職業軍人の転職は難しい。それが貴族の三男として育って来た者なら、なおさらだろう。だが、フロルはここでもう一押しすることにした。フロルも、簡単には引けないのである。
「私は、このままでは同盟が滅びると思っています」
「滅びる!?」
「ええ、帝国軍は若年層が凄まじい勢いで育って来ている。同盟の軍事的人材はここ数年の戦いで急速に失われている。社会機構についてもそうです。戦争の継続の弊害が、社会のそこかしこで起き始めている。人為的ミスが多発するのは、社会の基盤になるはずの壮年層が戦争にとられているからです。そういった政治的な問題も大きいですが、それに、私は一人、怖い男がいるのですよ、ベンドリング中佐」
ベンドリングは視線をフロルに戻した。フロルは、右胸を触っていた。
「私はね、ベンドリング中佐、今年の始めに死にかけたんですよ。ヴァンフリート4=2基地の戦いでね。そして、同じ男に、同盟軍はここ数度負け続けている。私はあの男が怖いのです??」
??ラインハルト・フォン・ミューゼルという男が。
フロルの言葉は、ベンドリングの心臓を鷲掴みにしたようだった。
「私はラインハルト・フォン・ミューゼルに、この右胸を撃ち抜かれたのですよ。私はカリンを残して死ぬところだった。あの時の恐怖! そして第6次イゼルローン攻略戦で、活躍した敵の小艦隊、あれもミューゼル中将のものだ」
ベンドリングが恐怖の色を瞳に強くした。フロルの言葉に、彼はかつてのラインハルトとの出逢いを思い出しているのだろう。あの鋭敏極まる天才児が、同盟を滅ぼす……。
それは悪夢にも似た直感だった。ありうる、とベンドリングは思ってしまったのだ。ありえない、という理性の声を捩じ伏せて、その考えは産声を上げた。
「私はカリンのために、いや、守るべき人たちのためにこの命をかけるつもりです。そのためには、負けるわけには、いかないんです。ベンドリング中佐」
今、ベンドリングの目には力強いものが広がり始めていた。それはかつて、帝国のためにと巡航艦ヘーシュリッヒ・エンチェンに乗り込んでいた時、持ち合わせていたであろう、軍人として矜持と本能だった。フロルの言葉は、強烈な恐怖とともに、彼にそれを思い起こさせつつあった。
「だから、ベンドリング中佐、あなたにお願いしたいのです」
「……わかりました。私の及ぶ範囲で、微力を尽くさせて頂きます」
フロルはその言葉を望んでいた。そして、それを手に入れた。かつて情報部として帝国中枢にいたベンドリングの協力は、フロルとバグダッシュが根付かせている情報網に大きな発展をもたらすに違いない。フロルはベンドリングの経験はもちろんのこと、能力も買っていたのである。来る日のために、フロルは着々と、その準備を進めていたのであった。
こうして
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