休息の日
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に通っている。
「もしかして」
「ええ、カリンのクラスメートよ」
フロルは運命の悪戯を思った。だが、ありえない話ではない。もし、フロルが考えた通りなら、マルガレータは亡命から2年しか立っていない。帝国の貴族令嬢が叛乱軍の公用語を覚えているはずもないから、マルガレータはわずか2年でここまで同盟公用語を覚えたということである。クラスも、同じ年齢のクラスというわけにはならないだろう。宇宙の反対側からやってきたのだ。学ぶことすら、まったく違うはずだ。だから、10歳のカリンと同じクラスにいるのだろう。亡命者の子弟は集めてあるのかもしれない。それぐらいの配慮は、ハイネセンの教育委員会側もするだろう。
だが、問題はなぜフロルの名が知られているか、の方であるが、残念ながらフロルには心当たりがあった。
「もしかして、あの作文?」
「ええ、そりゃあもちろん!」
半年ほど前、カリンが作文の宿題と言ってフロルのことについて書いたことがあった。完成されたそれをフロルは読んだのだが、少なからず面映い気持ちがなかったではない。
「カリンは結構クラスでも人気者で、男子からも人気があるんですよ」
マルガレータとフロルはとりあえず、一緒に歩きながら話をする。どうやら、マルガレータも軍官舎に住んでいるようだ。
「そうか、まぁ、それはよかった」
「だけど、告白されてもすぐに振るもんだから、みんな不思議がってたんです。だけど、あの作文を授業中に読み上げたおかげで、みんな大騒ぎ。あの作文、どう読んだって保護者の人が大好きってわかりますもの。でも、男として好きってわけじゃないのね。だって、それなら保護者に恋人がいることに耐えられません。だから、きっと男を見る目が異常に厳しくなってるってことなんですよ、きっと」
「ははは……」
笑うしかない。確かに、中学生程度の少年に、フロル並のケーキの腕前を求めたならば、目に適う男はいないだろう。
などと、フロルは考えていたが、いい加減、フロルも鈍感なところが多い。彼がカリンに上げている無限の愛情は、それを受ける身にとっては甘く魅力的なものだったのだ。母からの愛を失い、悲しんでいた少女にとっては。だが、それに気付かないのもフロルの美点であったろう。
「フロルさん、あれから准将まで昇進したんですね。おめでとうございます」
「ありがとう、お嬢さん」
「メグって呼んでください。カリンも友達も、みんなそう呼んでいます」
「メグは亡命してきた人なのかな?」
「ええ、そうです」
本来、この手の質問はデリケートであると思われている。だが、同じ亡命者の娘であるカリンを保護しているフロルに対しては、マルガレータも気負いなく答えられるらしい。もっとも、フロルにとっては帝国も同盟も、差別はまったくないのだが。
「
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