休息の日
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いたようだった。足下にその買い物袋を置いて、スーパーの外壁によしかかっていたようだった。その目は悲しそうに伏されていたが、フロルがバックを持って、警官と現れたのを見て、嬉しそうに顔を上げた。
「お嬢ちゃん、その荷物を見ててくれたのかい?」
と聞いたのはフロルだった。少女の心遣いが嬉しかったのである。
近くでみる少女は鮮やかな金髪と碧《みどり》色の瞳を持った可憐な少女だった。顔立ちは気品すら感じるほど繊細で、カリンと良い勝負の美人である。多少気の強さが目元に表れているが、それも愛嬌というものだった。年頃はやはり、カリンよりは少し上だ。カリンも、あと二年くらいしたら、これくらいの背格好になるだろう。
「そうです。あなたがバックを取り返してくれたのですね?」
少女は同盟公用語でそう聞き返した。顔は笑みを浮かべている。安心しているのだろう。
「ええ、あなたが引ったくりにあったように見えたのでね。慌てて追いかけたよ」
「凄い速さでした。だから急に走り出したあなたが、犯人を取り押さえてくれると思って、荷物を見ていたんです」
「ありがとう」
「いえ、こちらこそ、本当にありがとうございました」
警官は、少女の許可を取ってから、バックの中から財布を取り出し、中に入っていた身分証の顔と少女の顔が同じであることを認め、そのバックを少女に返した。
「一応、君の名前を聞いておいてもいいかな」
警官は手帳を取り出しながら聞いた。
「マルガレータ・フォン・バウムガルデンです」
警官はそれに頷き、出頭を願うかもしれないことを告げてから、フロルと少女??マルガレータの元を去った。
少女はそれに一安心、という感じであったが、フロルはまた別の考えが頭をもたげていた。
??マルガレータ……。
フロルはその名に聞き覚えがあったのである。ファミリーネームが違ったが、その少女は帝国貴族であり、そして幼少のみぎり、同盟に亡命してきていたはずだが……。
「お嬢さん、一つ聞いてもいいかな?」
「ええ、なんですか……ええっと」
フロルは自分が名乗っていないことに気付いた。
「あ、ごめんごめん。俺はフロル・リシャール。同盟軍准将」
「准将?」少女は目の前の若い優男が准将であることにも驚いたようだが、名前にも驚いたようだった。「あなたが、フロル・リシャール?」
「え、俺を知っているの?」
フロルはそちらの方がよほど驚きだった。
「ええ、知ってます」少女は可笑しそうに笑った。「私、ハイネセン第一スクールです」
ハイネセンにはいくつもスクールがあるが、大学が16歳からであるから、実質、相沢優一時代における高校、とはこのスクールが当てはまることが多い。そしてもちろん、カーテローゼ・フォン・クロイツェルもハイネセンのスクール
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