休息の日
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体に罪悪感を感じて、個人的幸福を追求できないようだったが、フロルに言わせれば逆であった。戦争で、いつ死ぬかわからない。だからこそ、今を幸せに生きたい、と考えるのだ。
そんな思いを抱きながら、フロルは街に来ていた。二日のあとはクリスマスである。この世界では既にキリスト教が廃れて久しかったが、12月25日は祝日、というのは未だに残っているのである。
楽しいもの、美味しいもの、そういうものは時代を超えて残っている。酒もそうだろうし、美味しいケーキもそうだろう。ハロウィンも残っている。更に言えばコカ・コーラの類まで残っているのは、転生後のフロルを面白がらせた。フロルはすでに、この世界が創作の世界である、などとは考えていない。この世界は厳然として存在する。きっと、自分がかつて住んでいた世界から、遠い未来の話なのだろう、という納得の仕方をしていたのだ。
そこでフロルはみんなでパーティをすることを提案した。それに真っ先に賛成したのはカリンである。カリンはもうそろそろ自分のケーキの腕を思い切り発揮したいと考えていたようだった。みんなにそれを披露する場に持ってこいと思ったのだろう。カリンは明るく利発な子に育っている。原作での鋭くて、暗くて、内罰的なところがない。フロルは嬉しかった。
その次に賛成したのは、先月次女を出産したばかりのキャゼルヌ夫人であった。彼女はこういう明るい催しが好きだったようだ。美味しいケーキと夫人の料理に惹かれたイヴリンが手を挙げ、これにシャルロットやユリアンもが賛同するに当たって、ヤンやキャゼルヌ、アッテンボローも出席が決定した。
もちろん、ビュコック夫妻も誘ったのだが、
「あまり老人がおると、若い者が楽しめんじゃろうて」
と言って断られてしまった。カリンはそれにがっかりしたようだったが、夫妻にクリスマスケーキを持っていくことを思いついたらしく、今頃家で自作ケーキを試行錯誤していていることだろう。
ここで、フロルは意外な人物にも出席を打診している。
ドワイト・グリーンヒル大将である。
これにはフロルの思惑がある。フロルはグリーンヒルとの初対面以降、どうにも警戒されている節があるのだ。フロル自身も、あの時のことは多少強引が過ぎたか、と思ったが、急ぎ上層部とコネを作るためには仕方のないことだったろう。
バグダッシュなどには”フロルはまるで予言者だ”などと言っていたようであるし、警戒のレベルを下げるためにも、親密になっておくのは悪いことではないだろう、と考えたのである。
それにグリーンヒル夫人は既に亡くなられている。放っておけばグリーンヒル大将は仕事ばかりで、せっかくの祝日をつまらなく済ますだろう、という配慮も何割か含まれていた。
更に、他にも大きな目的がある。
フレデリカ・グリ
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