休息の日
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人名が二つあった。
「ヤン・ウェンリーとフロル・リシャールか……」
戦闘考証の欄である。総司令部にいた作戦参謀、ヤン・ウェンリー大佐の水際立った智略。今回の戦いで、一時的だけでも、同盟軍が望んだように混戦に持ち込めたのは、ヤン・ウェンリー大佐の手腕だったという。グリーンヒル大将も彼を高く買っているらしい、と捕捉が書かれている。エル・ファシルはまぐれではなかった、ということだろう。
そしてもう一人、フロル・リシャール。本来は第5艦隊の分艦隊、そこの参謀長をしていたはずだが、敵将の奇略を見抜くこと数度。戦時任官で准将となり、麾下1500隻でもって敵将を奇襲し、同盟の矜持を保ったという。
ヤン・ウェンリーの政治嫌いは有名な話だった。皮肉好き、という話も聞く。皮肉屋という意味ではフロル・リシャールという男も変わらないようだが、フロルは私を嫌っていなかったようだ、とトリューニヒトは思い出した。事実は、嫌いという悪感情を覆い隠すだけの演技力がフロルにあった、というだけなのだが、見繕う努力をするだけマシである。
トリューニヒトはフロル・リシャールと接触することに決めた。これは攻略戦前に話し合っていたことと変わらなかった。今回の戦いでも、フロルという男の有能さは発揮された。ある程度は、期待しても良いようだ……。
***
宇宙暦794年12月23日。フロル・リシャールが第6次イゼルローン攻略戦からようやく帰って来た、3日後のことである。
フロルはハイネセンに着くなり、統合作戦本部に呼び出され、戦時任官の准将を公式に昇進させ、准将とする旨を告げられた。図らずもシェーンコップの言った通りになったのである。一つには、今回の戦いで有能な准将、少将クラスが多く戦死したせいであろう。その責任の一端は明らかにラインハルトにある。彼が2000隻の艦隊を率いて軍事ピクニックに出掛けたおかげで、それを相手にした将校が多く天に召されたのだ。本来ならここで死ぬはずのワイドボーンも重態であり、彼の上官であったワーツ少将に至っては戦傷が元で昨日死亡した。
今後軍中枢部を担うはずであった新進気鋭の人物が死んだことが、この度のフロル昇進と関わってくるようである。
フロルは、というと、それを素直に受け取っていた。給料が上がるというのは、悪いことではない。カリンのためにもっと服を買ってやれるし(もっともカリンはモノを欲しがらない子だったが)、食料費に悩む必要はなくなるし(フロルとカリンのデザートの趣味は明らかに家計を圧迫していた)、イヴリンとの関係にもお金が必要だからだ(所謂、交際費である)。
今、フロルは本格的にイヴリンとの結婚を考える段階に来ていた。今は戦時である。ヤンのような男は軍人という職業自
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