暁 〜小説投稿サイト〜
【旧】銀英伝 異伝、フロル・リシャール
第6次イゼルローン攻略戦(4)
[7/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
に砲火を集中させたのである。


 
 ラインハルト艦隊と、フロル艦隊の眼下で、青白く輝く巨大な柱が、回廊を過ぎ去った。数千の艦艇が一瞬で虚無に帰した。直撃で気ではなかった艦艇も、その膨大なエネルギーに誘発されるがごとく、リング上に小爆発を起こしていった。それは人の命を火薬にした花火であった。その一瞬で、人間の命が消えていったのだ。

 フロルは、というと、ラインハルト艦隊の反応の速さに驚いていた。それは明らかにラインハルトの麾下である下級指揮官の能力が高いことを意味していたからである。いかに軍事的天才であるラインハルトであっても、ここまで早く2000隻の艦隊を瞬時に掌握はできない。つまり今、フロルの艦隊に強烈反撃を試みている320隻程度の艦隊は、各々自己判断でここまで合理的で息のあった反撃を繰り出しているということなのだ。

 その時フロルに思い浮かんだのは、将来帝国の双璧と呼ばれる男たちの顔だった。
??まさか、この段階であの二人がラインハルトの下についただと!?
 それは彼の想定を超えた事実であった。



 次の一撃で虚無の円柱と化した回廊の中心軸を、第二の光柱が走りぬけていった。あらたな犠牲者は出たが、それは、ほとんど問題ではなかった。それはただ、今回もイゼルローンの攻略に失敗したという証拠に過ぎなかった。6回目の挑戦も、過去5回と同様の結末を得たのだ……。



 だがフロルには、そんな感慨に耽る暇も余裕はなかった。
 彼はすぐに麾下の艦隊を退却させた。そもそもこの艦隊は急ごしらえの敗残兵力なのである。例え同数であっても、まともに撃ち合えば負けるのは必定である。最初の奇襲で100隻程度を打ち減らし、一矢報いた、というので十分であった。
 フロルはあわよくばラインハルトを斃さんと思っていたが、すぐに諦めたのだ。
 数十秒の後にはラインハルトが艦隊の陣形を立て直していたが、フロルの同盟艦隊は既に艦を引いたところであった。ロイエンタールとミッターマイヤーはこれを追撃せん、としたが、その隙のない撤退と速度に、それを却下せざるを得なかった。ラインハルトはただちに要塞への帰還を命じた。






 ここに、第6次イゼルローン攻略戦は、自由同盟軍の全面撤退をもって終結した。同盟軍の戦死者は584400名、帝国軍のそれは245900名。同盟軍はまたしても負けたのだ。敵よりも多くの味方を死なせ、得たものは何もない。要塞主砲さえなければ、という意味のない仮定を口ずさみながら、傷心を癒すしかないのだ。ヤンやフロルが考えた通り、戦略的になんの意味もない戦いに終わった……。





「あのタイミング、あれは……」
 ラインハルトは見事な働きをしたロイエンタール、ミッターマイヤー両名を労った後、司令官
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ