第6次イゼルローン攻略戦(3)
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。それよりも、早く指揮権を確立せねばならない。戦況は刻々と終わりに近づいている。恐らく一隻でも多い艦艇を導入して、この混戦に収拾をつけるのが、ロボスの狙いなのだろう。
「は、謹んで拝命します」
「君は作戦参謀としても優秀だと聞いている。何か、意見はあるかね」
フロルは話を続けたがるロボスに辟易していたが、同時に意外な印象も受けていた。歴戦の名将という印象である。彼はシトレ元帥と四半世紀に渡ってライバルであり続け、帝国との長きに渡る戦争を生き残って来たのだ。無能であるはずがない。だが、このあと急激にその能力を失うはずだった。だが、その兆候がこのロボス元帥にはない。そこにあるのは、老練な宿将の顔だった。
「……では、謹んで申し上げます。現在、戦況は混戦状態を極めておりますが、同盟、帝国軍ともにその損害は30万人ほど。そろそろ、撤退の頃合いだと小官は考えます」
「……撤退か」
ロボスは露骨に打算するような顔をしている。フロルはそれにうんざりしながらも、言葉を重ねた。
「敵の要塞主砲を使わせないまま、ここまで善戦したのです。既に戦果としては十分だと小官は思います。撤退するには、この混戦状態のまま要塞主砲の射程外まで敵を引きずり出し??」
「いや、わかった、リシャール准将。貴官の言うことは理に適っている」
ロボスはフロルの言葉を途中で止めた。フロルは落胆した。恐らくロボスには彼なりの作戦なり戦略があるのだろうが、これ以外に手段はありえない、とフロルは考えていたからである。
「は、ありがとうございます」
「うむ、グリーンヒル大将の言う通りだ。君の手腕に期待する」
フロルはそれで話が終わりだ、と言わんばかりに勢いよく敬礼をし、総司令官室を飛び出した。ロボスは手元の端末で、作戦参謀のフォーク中佐を呼び出している。
イゼルローン要塞を出撃した帝国軍の総数二〇〇〇隻ないし二五〇〇隻の部隊が、戦域を斜行して同盟軍の後背に出て、退路を絶つかに見えたのは、12月9日2200時のことであった。敵部隊は進むべき先にいる左右の同盟軍を無視し、ひたすら同盟軍の防御分布が薄い宙点を選定しては、その点を結び線にする作業を、快速でこなしていった。その速さは瞠目に値するものであったろう。同盟軍はこの目障りな敵に注目し、これを捕捉撃滅するという欲求に逆らえなくなっていった。
??眼前の戦術的利益にとらわれて大局を見ない者と、それを凌駕する者との差が、ここに現れた。
とヤンは考えた。
同盟軍の指揮官達は、再び現れた”小賢しい敵”を倒そうと、艦首を翻してまで追いかけている。
2000隻という数は少ない。少なすぎる。敵中を突破することなく、崩壊してしまう可能性があまりにも大きい。よもや功を焦った者の個人プレ
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