第6次イゼルローン攻略戦(3)
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顔には疲労が色濃く残っていた。
「フロル先輩は、なんだってこんなところにいるんです?」
これはヤンの問いであった。フロルも実は、自分がここに来ている理由がわからない。彼は当初、第5艦隊の分艦隊参謀長に過ぎなかったのだが、ロボス元帥によって呼び出されていたのである。彼には心当たりはない。ただ、楽な仕事を任されるとも思えなかった。
その事情を語ると、ヤンは何かを思い出したような顔をする。
「なんだ、おまえ、なんでだかわかるのか?」
「先輩は、ホーランド少将が戦死したと聞きましたか?」
ホーランドが死んだ?
フロルは思わず叫びそうになるのを、ぐっと堪えた。ホーランドは確か、第3次ティアマト会戦で独断行動をとった挙げ句、ラインハルトにやられて戦死するはずである。それが少将のうちに死ぬとは、歴史から外れた話だった。
「知らなかったみたいですね」
ヤンはフロルの顔からそれを読み取って、一口、手に持ったマグカップから紅茶を飲んだ。もっともまともな味でなかったらしく、眉間に一瞬皺がよる。自分で紅茶を入れたようだ。
「ミサイル艦部隊を率いてたんですが、あの1700隻の艦隊に殲滅されたそうです」
「ヤンも、あの艦隊はロボス元帥の言うところの”小賢しい敵”だと思うか?」
「ええ、あれだけの才を持った将官が何人もいると思いません。何人も入れば、我々は今頃、冥界の門をくぐっているでしょうね」
キャゼルヌは既に聞いていたようだったが、アッテンボローはその言葉に驚いたようであった。あの敵の脅威を正しく認識していた者は少なかったのである。そしてその少ない中の二人が、このヤンとフロルであった。
だが一つ、特筆すべきは、ヤンは己の才覚でもってそれを感じ取っていることである。彼はあの卓越した手腕を見せた敵将が同一人物であると感覚的に嗅ぎ付け、そしてそれを断言してみせた。それは一流の将官なければ手に入れられない嗅覚のようなものだったのかもしれない。フロルは自身がそれを有しているのかはわからない。だが、彼は己の分を弁え、危険を避けようとする男である。自然、人よりは鋭いのだった。
「フロル先輩は恐らく敗残兵力、まぁと言ってもホーランド少将が遺していった潰走部隊や、戦場の端々で生まれたそういう部隊の後片付けをさせられるのだと思いますよ?」
ヤンの言葉にフロルは頭を抱えた。それはつまり、少将の死であぶれた敗残兵の世話を焼かされるということを意味している。
「まぁ、このあとは撤退するだけですから、先輩も無理しなくて済むと思いますよ」
ヤンはお気楽にそう言ったが、フロルには安心してもいられない。恐らく、ラインハルトが最後の武勲を立てようと、戦場に現れるのではないか、と考えていたからである。
「……それならいいが、ヤン。
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