第6次イゼルローン攻略戦(2)
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フロルは左手にあった応急スプレーをリューネブルクに投げた。タンパク質が主体の有機物によって傷口を塞ぎ、一時的に出血を抑えるものだった。リューネブルクは左手でそれを空中で掴み、眉を顰める。
「いったいどういうつもりだ?」
「俺はフロル・リシャール大佐だ。リューブベルク、覚えておけ。先月、ラインハルト艦隊を敗ったのは俺だ。あの甘ちゃん坊やを躾けてやったんだ。帝国軍からは感謝されてもいいくらいだな」
「ほぅ、おまえが、か」
リューネブルクは面白いことを聞いたというように、口だけを歪めて笑った。リューネブルクはあのラインハルトが11月に半数の艦隊を失うという失態を演じたことを聞いて、溜飲を下げていたのだ。それを演出したのが、自分の前に立っている男なのだと言う。帝国内部の情報をここまで知っているとは、ただ者ではない。そして何よりこの生意気な眼光、シェーンコップの目にそっくりだ。
「俺としては、おまえとラインハルトが帝国内部で自滅してくれれば嬉しいんだがな」
それはオフレッサーの言葉だ、とリューネブルクは気付いた。
「おまえは、そう言われて追い出されたのだろう?」
??この男は、いったいどこまで知っているのだ?
リューネベルクは目の前の男が、急に人の形をした化け物か何かのように思えてきた。
「……ミュッケンベルガーの幕僚、パウル・フォン・オーベルシュタインに接触しろ」
「俺は貴様の指示は受けない」
「別にこれは指示ではない」
フロルは首を振った。小さく笑ってさえいる。
「おまえのような男は、きっとオーベルシュタインと気が合うだろう。あの男は有能だ。あの男を利用すれば、貴様も出世できるかもしれんぞ」
「俺は俺自身の能力で進む。人の手は借りん」
「おまえの右手はもうないのだ、リューネブルク」
フロルはリューネブルクに話しかけていた。この男は、生きていればこそ役に立つ。帝国においてラインハルトに敵対するように仕向ければ最高だ。この男は、猛毒だ。帝国を内から侵していくだろう。
「失せろ、リューネブルク。次に会う時はおまえを殺す。せいぜい楽しみにしているさ」
フロルは彼のできる一番の笑顔で、挑戦の言葉を吐いた。リューネブルクはそれを視線で殺そうとした数瞬後、踵を返して強襲艇に戻っていった。途中、右手を拾うのも忘れない。
フロルはその姿を見て、これでよかったのだろうか、と自問していた。彼は敵側の人間の運命すら変えてしまった。そして、これがどのような結果を招くのか、彼にはまるでわからなかったのだ……。
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※訂正※
リュ
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