第6次イゼルローン攻略戦(2)
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つであったが、フロルの記憶の補足をする、という意味合いも大きかった。そして、フロルがその時読んでいたのは、ヘルマン・フォン・リューネブルク少将の現在の境遇に関する報告書であった。フロルの記憶は間違っていなかった。ただ、これは一か月前のものである。恐らく、リューネブルクの妻エリザベートは既に、彼女の兄である内務省警察総局次長ハルテンベルク伯を殺した頃合いだろう。
彼は報告書に満足しつつ、急ぎ、戦闘の場に赴いた。
侵入してきた帝国軍との間に、壮絶な白兵戦が繰り広げられた。先頭に立った男が、戦斧でもって左と右にいた薔薇の騎士隊員を瞬く間に薙ぎ倒した。そしてやって来たシェーンコップの姿を見つけたリューネブルクは、 装甲服のヘルメットの中で笑を頬に浮かべた。
「渇望に応えて来てやったぞ、未熟者のシェーンコップ! 貴様では案内人として不足だが、俺は寛大な男だからな」
ブルームハルト大尉が、好戦的な眼光を向けて一歩踏み出したが、水平に突き出された連隊長の腕が、彼の前進を阻んだ。
「やめろ、ブルームハルト、二年後はともかく、今はまだお前では奴に勝てん」
「そうだ、ひっこんでいるんだな。尻に卵の殻をくっつけた雛鳥が」
ブルームハルトが言葉を返そうとした時には、シェーンコップは既に歩を進め、リューネブルクとの間に戦斧を交えていた。
床を蹴ったのは同時、戦斧の速度もまた、同時であった。二つの兇刃はすれ違い、気に触るような擦過音と共に、火花を散らした。薔薇の騎士の新旧二人の連隊長は、飛び違い、反転し、文字通り殺人的な斬撃を応酬しあった。永遠に続くかと思われた、苛烈を極まる闘いは、リューネブルクの一瞬のよろめき、一瞬の隙によって決着を迎えた。
「そこまでか、リューネブルク!」
声と斬撃と、どちらが速かったか、判断できる者はいなかった。シェーンコップの放った一撃が、リューネブルクの右腕を肘から吹き飛ばした。リューネブルクは仰け反り、よろめき、後ろに下がって、片手で戦斧《トマホーク》を構えたが、数秒後、膝を屈した。左手から戦斧《トマホーク》が音を立てて離れた。
右手から勢い良く流れる血液を、リュ=ネブルクは左手で抑えた。
シェーンコップが姿勢と呼吸を整え、敗者に低い声を投げかける。
「何か言うことがあるか?」
明らかな決着でもって敗北した男は、傲然とした態度と視線で、勝者を見返した。
「そうだな、一つだけ言っておこう。貴様の技倆が上がったのではないぞ、シェーンコップ、青二才よ。俺の力量が衰えたのだ。でなくて、俺が負けるわけはない」
「……そうかもしれんな」
シェーンコップはその言葉を否定しな
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