第6次イゼルローン攻略戦(2)
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
第6次イゼルローン攻略戦(2)
混戦状態は収束の糸口すら見せず、多くのエネルギーを浪費して続けられていた。大小様々な悲劇、喜劇、惨劇が量産される中で、薔薇の騎士主演の戦闘劇は、まことに華々しく、しかも常軌を逸していた。
本来、薔薇の騎士の出番は、艦隊戦においてはそう多くないはずである。彼らは陸戦部隊であって、地に足をつけるのが本分だからだ。たが、第6次イゼルローン攻略戦において、この過激な亡命者集団は、非常識極まりない強襲艇による突撃を繰り返した。
更に彼らは、敵の一艦を占拠する都度、その通信装置を使用して、かつての隊長に呼びかけたのだ。
「出てきやがれ、リューネブルク、地獄直行便の特別席を、貴様のために用意してあるぞ。それともとうに逃げ失せたか」
このような薔薇の騎士連隊のやり方に対しては、「これは彼らの私戦ではない」と、窘める声もあったが、なぜか同行しているフロル・リシャール幕僚長がこれを擁護した。
「これは彼らなりの復讐戦だ。彼らは己の矜持のために戦っている。軍人としての矜持を保たんする者に対して、そのような言は慎まれたい!」
それは少し買い被りというものであったが、人づてにフロルがこのような発言をした、と聞いた薔薇の騎士の面々は、肩を竦め、照れ笑いをし、頬をかいて、戦斧をもつ手を握り直したのである。
こうして、薔薇の騎士は、血文字を記したリューネブルク個人宛ての招待状を、戦場の各処にばらまいて渡ったのであった。
「出てこい、出てこい、リューネブルク、出てくりゃあの世へ直行便、地獄の魔女どもお待ちかね、朱に染まった色男!」
上品とは称しがたい即興歌まで作って、旧連隊長を待ち焦がれていた薔薇の騎士連隊が、ようやく望みをかなえられたのは、12月5日14時のことである。
前線の所在さえ明確ではない混戦域を、彼らの揚陸艦は移動していた。そこへ、帝国軍の揚陸艦が、衝角を向けて急接近し、回避行動を嘲笑うようにぶつかってきたのだ。
揚陸艦どうしが衝突したのだ。150年の長き戦争でも、このようなことは少なかっただろう。誰もが衝撃に驚いた中で、シェーンコップだけがその意味を正しく理解していた。
「リューネブルクが来たぞ!」
緊張が、連隊全員を帯電させた。
既に装甲服を着用していたフロルも、手に持っていた報告書を放り投げて、戦斧《トマホーク》に持ち替えた。それはバグダッシュ中佐から届けられた、帝国の動向であった。彼は今までにも、いくつかの資料を彼経由で秘密裏に手に入れていた。それは何か新しいことに気付く、というのも目的の一
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ