第6次イゼルローン攻略戦(1)
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重厚で隙のない陣を構える艦隊の姿を、目に焼き付けていた。表記には第5艦隊の文字。
(第5艦隊に『奴』はいる!)
本来ならば15倍以上の規模を誇る同盟軍は、イゼルローン要塞主砲の攻撃範囲を避けるために、数の優勢を生かすことができなかった。陣型を拡げれば、雷神《トゥール》のハンマーに薙ぎ払われる。その結果、極度に前後に細長い紡錘陣型をとり、その尖端をラインハルトに向けて突進する以外にないのであった。
ラインハルトと同盟軍との攻防は、面積が小さい分、密度は只ならぬものであった。本来なら、その圧倒的な兵力比で、まともな戦闘になるはずがないのだが、包囲されぬかぎり、ラインハルトは負けぬ自信があったのだ。正面から来るしかない敵を次々と翻弄し、ラインハルトは集中砲火と柔軟な進退によって敵の損害を増やし続けた。
だが、ラインハルトの目的は同盟軍の出血死ではない。それ以前に自分の艦隊が摩耗し尽くすことがわかっていたし、そのような無謀を行う若さを、ラインハルトは既に矯正していたのである。彼の目的は、ラインハルト一人に武勲を独占されまいとして、突出してくるであろう帝国諸艦隊である。そのまま混戦に持ち込み、その隙に撤退する。本来ならば混戦は望ましくないが、個人的武功に今回は満足する、という心の余裕を、ラインハルトは先日の件で獲得していたのだ。
「我が艦隊に告ぐ。敵とこのまま交戦するが、敵艦隊を無理に突破する必要はない! 徐々に後退しながら、我が艦隊は撤退する! だがその代わり、後方にあるミサイル艦部隊の残存兵力を掃討する! 高速機動部隊は混乱中のミサイル艦部隊を徹底的に叩け! ワルキューレ部隊発進! 小賢しいミサイル艦部隊を一艦も帰すな!」
ラインハルトは前方の第5艦隊と交戦しつつ、徐々にイゼルローンに撤退した。一方、後方で打ち破ってきたホーランド艦隊の掃討は、一種執拗なまでの徹底さでもって行われた。ラインハルトは艦数の絶対的少なさを客観的に把握しており、そしてその弱点をその頭脳と高速運動で補っていた。
2210時になるに至って、ラインハルトの目論み通り、味方艦隊がイゼルローンより出撃した。2240時、味方艦隊とスイッチする形で、ラインハルトの艦隊は要塞に撤退していった。戦果は敵作戦主力の殲滅、そして敵軍3万隻の阻止。おおよそ、満足すべき戦果であった。
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