第6次イゼルローン攻略戦(1)
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、一字一句間違うことなく理解していた。敵がもしあの艦隊であるならば、ホーランド程度の浅知恵などは軽く見抜き、そしてフロルの言った通りに攻撃するであろう。それは大いに考えられうる展開であった。確率論ではない。その可能性がある時点で、軍人はそれを考慮し、動く必要があるのだ。
「……第5艦隊、移動する。位置、総司令部の上部」
今更作戦を中止することはできまい。例え中止を決めたとしても、あのホーランド少将がそれに従うことはないだろう。あの者は自分をブルース・アッシュビーの再来と自負しているそうだが、笑止千万だった。
せめてできることと言えば、ミサイル艦部隊が突破されても、総司令部を攻撃されぬようにすることである。第5艦隊は予備兵力として後方で待機していた。例え総司令部を後ろに押しのけてでも、盾にならねばなるまい。
「そ、総司令部より通信です!」
総司令部を下に見ながら前線に出ようと移動していると、光速通信が飛んで来た。恐らく、指示にない行動をした第5艦隊を叱るつもりだろう。
「出せ」
フロルはビュコックの席の斜め後ろに立った。チュン艦隊は、今回は本隊のすぐ傍にいる。今回は独自行動はしないだろうという判断から、チュン少将からも艦隊旗艦にいてよいと言われていた。
「ビュコック提督。これはいったいどういうことですかな?」
画面に現れたのはドワイト・グリーンヒル参謀長であった。どこか怒気を感じさせる表情で、言葉厳しく詰問調である。
「グリーンヒル参謀長、ミサイル艦部隊は駄目じゃよ」
「な、何を仰る?」
ビュコックの第一声に、グリーンヒルは怒気以上の驚きをもって反応した。それはそうだろう。今、まさにこれから始まるであろう、今回の作戦の要を、駄目だと言っているのだから。
「儂の索敵部隊からの報告じゃ」
これはビュコックのはったりであった。
「敵左翼の端におる小艦隊1700隻は、あの逃した”小賢しい敵”だそうじゃ。恐らく、こちらの作戦を見抜いておるぞ」
グリーンヒルは顔に一瞬の焦りを走らせた。彼がヤン大佐に提出させたいくつもの戦況パターンの一つに、少数精鋭の高速運動によってミサイル艦部隊が攻撃される可能性が、示されていたのだ。もっとも注釈に、『客観的かつ戦局全体を的確に見渡せる敵将がいる場合に限る』とあったのだが、あの”小賢しい敵”にはそれに当てはまるのではないか。
「で、では」
「ミサイル艦部隊はもう攻撃を開始する。中止は間に合わん。第5艦隊が総司令部の盾になる。場所を空けてくれんかね」
「わかりました、ビュコック提督」
グリーンヒルはビュコックに丁寧な敬礼をして通信を切った。総司令部が後退をする。その空いた隙間に第5艦隊が入り込む。
そして、ホーランド艦隊が突入を開始した。
雷神《ト
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