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【旧】銀英伝 異伝、フロル・リシャール
後悔と前進
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いのです」
「本当に、そう思うか?」
「はい、心から」
「そうだな、そう思うことにしよう。俺は今まで味わったことのない敗北の香りを嗅いだ。この屈辱を忘れなければ、二度とこのような愚かなことはしない。済んだことを悔やむのは、俺らしくもないものな」
「ええ、ラインハルト様には似合いません」
 二人は視線を合わせて笑い、こうしてラインハルトは、心理的再建を果たしたのである。強固な意志と、今までは持ち合わせていなかった慎重さを獲得して……。




              ******




 ワルター・フォン・シェーンコップ大佐が、第5艦隊チェン分艦隊旗艦ネストールに姿を現したのは、宇宙暦794年11月31日のことであった。
 彼が連隊長を務める薔薇の騎士(ローゼンリッター)連隊は、この艦隊の陸戦部隊として、今回の第6次イゼルローン要塞攻略戦に参加している。今回の彼の目的は、前の前の隊長であるヘルマン・フォン・リューネブルクを殺すことであった。差し当たって、彼には連隊の指揮権こそあったが、出撃は本隊の許可が必要であった。本来ならば、帝国軍の亡命者で作られた薔薇の騎士(ローゼンリッター)連隊はその勇名と風評によって忌避されるものだったが、第5艦隊には戦友とも呼べる男がいたので、今までになく立場が良かった。シェーンコップが本部に対して送る要望??特に物資や設備に関連するものが多かったが??は、今までにない速度と真摯さによって叶えられていた。おおよそ、参謀長のおかげであろう。

「ワルター・フォン・シェーンコップ大佐、参上つかまつりました」
 シェーンコップは参謀長室に入ると、それらしく礼をしてみせた。もっとも、入った瞬間、フロルの顔に只ならぬ色を見いだしていたのが、いきなりそれを問いただす了見は持ち合わせていなかった。
「ああ、シェーンコップ大佐、お疲れさま」
「リシャール大佐、我が艦隊ももうそろそろイゼルローン要塞の前に来るでしょうな。それでお願いがあって来たのですが」
「うーん、いや、わかっている」
 フロルは眉間を抑えながら、椅子の背もたれによしかかった。
「ほぅ、小官の考えがお分かりになられると?」

 シェーンコップは目を細めていた。このフロル・リシャール大佐という男、今年のヴァンフリート4=2での戦いでも、先日の艦隊戦においても、なかなかどうして辣腕を奮っている。その戦略眼、用兵技術は他ではちょっと見られないものだ、と彼は考えていたのである。

「どうせ、強襲揚陸艦で突撃したいというんだろう? それで、いちいちリューネブルクにラブコールを送る、そんなところじゃないかな?」
「なるほど、フロルにはお見通しというわけか」

 フロルはこの時28歳、対してシェーンコップは30歳を迎えていたが
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