後悔と前進
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ンベルガーはもう少し大きな罰を望んだが、下手に罰を与えて皇帝の不興を買うというのは、この程度のことでは避けたかったのだ。
ラインハルトはそれに無知であるほど、若くはなかった。彼は一瞬後その事情に思い当たり、奥歯を噛み締めながらも、敬礼して総司令官室を出たのである。
「ラインハルト様」
総司令官室の前で待っていたのは、ジークフリード・キルヒアイス大尉だった。彼はラインハルトが元帥より召喚されたのを心配し、部屋の前で待っていた。これは過保護、というべきものだったかもしれないが、彼ら二人の絆を持ってすれば当然の行動であったろう。
「キルヒアイス、俺は驕り昂った無能者だ!」
それはラインハルトの血を吐くような自嘲だった。キルヒアイスはその瞳の放つ激情の強さに、かける言葉がない。ラインハルトはこのようなことを言うのは、今までほとんどなかったのである。かといって、ただ慰めても意味がないだろう。ラインハルトは一瞬であれ、叛乱軍によって完全な罠に陥れられ、その結果艦隊の半数を失ったのだから。
「ラインハルトさま」
「キルヒアイス、俺は戦士でなく、猟人の気分になっていたようだ。相手にも武器があり、戦意があり、用兵技術があるのを忘れていた。それにしても叛乱軍にも、よくできる奴がいる。完全に、俺の動きを読まれていた」
「ですが、そのような人物が多くいるとも思えません」
「そうさ、たった一人かもしれん。だが、一人だろうと、幾人だろうと、叛乱軍の指揮官にやられるようで、どうやって宇宙を手にすることができるか!」
遠い将来、これは覇気と烈気に富んだ帝王の発言として、賞賛されることになるかもしれない。だが、帝国暦四八五年一二月の時点において、これは一八歳の若者の、誇大妄想に近い空疎な歎きにすぎなかったであろう。それが空中楼閣でないことを、ジークフリード・キルヒアイスだけが知っていた。
「ラインハルトさま、無為に敗れ去ったのではありません。敗北の淵を知ったのです」
ラインハルトは傍らに控える赤毛の親友に、思わず目をやった。
「人は常に勝ち続けることはできません。それは能力の限界だからではなく、人間だからです。勝ち続ける人間も、時には絶望の縁に立つことがあるでしょう」
「……それが今回だというのか」
「ラインハルト様は負けませんでした」
キルヒアイスは強く言葉を言った。
「あの状況下で3倍以上の敵に囲まれようとして、見事それを脱出なさりました。ラインハルト様は艦隊の半数を失いましたが、ラインハルト様でなければもう半数の将兵も今頃はヴァルハラに旅立っていたでしょう。ラインハルト様、失った将兵の犠牲を、無駄にしてはなりません。何よりもラインハルト様になくてはならぬ経験になったはずです。ラインハルト様に足りないのは、経験だけ。これを糧をなせばよ
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