狐を罠にかけろ(下)
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央突破せよ!」
これはチュンの檄だった。
引きずり出されたかに見えた中央部隊は、その首輪を外されたかのように、猛烈な勢いで前進を始めた。もともと薄かった敵中央部隊に、猛烈な攻撃を集中させる。いつのまにか両翼が畳まれていた左右の艦隊はその中央艦隊の後ろに続き、一気に敵中央艦隊を蹴散らした。フロルの目的は、最初から敵の中央突破だったのである。敵がこちらの左右逆進をすると知っていて、それに一歩先んじて中央突破したのだ。
「だが、敵も早い」
フロルは呻くように言った。ラインハルトは後退しつつこちらを叩くのを即座に諦め、すぐに全速で同盟艦隊の左右を逆進していた。当初の作戦案に固執していれば、無理に後退して全速で突撃した同盟軍に無様に中央を突破されただろう。
10分後、同盟軍は帝国軍の背後に出た。即座に反転し展開を始める。ラインハルトもまた背面展開を始めた。これはフロルの思惑を裏切った。このままラインハルトは前進しながら迂回するだろうと考えていたのだ。だが、彼はこのタイミングにかけて、反転した。今、両軍はほぼ同じ速度で反転しつつある。そしてそれは、一歩先んじて同盟が勝りそうであった。
同盟は突撃を開始した。ラインハルトの艦隊で、反転が終わっていない艦が無防備な状態で攻撃を受ける。だがその9割は既に迎撃態勢にあった。戦線は崩壊しない。
さすが、ラインハルトというところであった。ともすれば背面をとられるところを、即座に見抜いて五分五分に戻したのだ。
「だが、これで終わりじゃないぞ」
フロルは自分が笑っていることに、気付いていなかった。
「敵も、なかなか」
ラインハルトは敵の攻撃を受け止めながら、艦隊の再構築を開始した。それは平凡な将には出来ぬ芸当だったろう。キルヒアイスも、矢継ぎ早に指令を飛ばした。だが、ここでまたも戦況が一変する。ラインハルト軍が艦隊陣形を構築し終えたその瞬間、上、下、後の三方向から、新手の敵が殺到してきたのである。
「敵艦隊が3方向より来襲! 我が艦隊上方、下方、後方!」
ラインハルトの顔に衝撃が走った。仕組まれていたのだ。我が艦隊の動きは敵によって察知され、そして敵もそれを待ち構えていた。我々は兎を狩る狐のつもりで、それを待ち受けていた罠に飛び込んだのだ!
そして我が艦隊の作戦を見抜いた、前方の艦隊。彼らは我々を倒すつもりはなかった。ただ、罠にかけるまで時間を稼いだだけだったのだ。
敵前方艦隊は我々の包囲を完全にするため、凹陣形でこちらに押し寄せて来た。3方向の艦隊も十分な戦力で包囲を完成しつつある。もうすぐ包囲が完成する。そうすれば、我々は全滅の憂き目を見るだろう。ラインハルトは死神の足音を遠くに聞いた気がした。
だがその時、ラインハルトは指を鋭く鳴らした。
「敵前方艦隊に
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