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【旧】銀英伝 異伝、フロル・リシャール
狐を罠にかけろ(下)
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部に、火力を集中させよ! 一点だ! 艦隊のレーザー砲とミサイルと、敵先頭の一点だけに集中せよ!」
 それは苛烈なまでの火力の集中だった。かつてこれほど攻撃を集中させた者がいただろうか。それは後になってヤンが好んで使う常套手段であった。フロルはそれを前借りしたのだ。フロルはチュンに提出した作戦案に、いくつものパターンを用意していた。そして今、その一つをチュンが絶妙のタイミングで拡大再生しているのだった。いかに装甲が厚いと言えど、これを防ぎ切ることはできない。ラインハルト艦隊の先頭部隊は、瞬く間に爆発消滅していった。





「くそっ、つまらんことを!」
 ラインハルトは悪態を吐いた。先頭部隊の損害は軽視できぬが、だからと言って他の大多数は無傷なのだ。だが、そのあまりに過剰な火力の集中によって、艦隊の足は一瞬鈍くなったのである。
「全艦隊、中央部を空けつつ敵に接近せよ。攻撃目標は敵中央部隊。火力を集中させよ!」





「よし、来た! 中央部隊はそのままゆっくりと前進せよ、ゆっくりとだ。左右の艦隊は中央部隊の後ろに行けるよう微速後退! 堪えてくれ! 攻撃目標は各位に任せる。艦隊運動に細心の注意を払え!」
 チュンが艦隊の陣形を腐心して保つ間に、フロルは声を上げた。それほど、ラインハルトの攻撃は激しかった。それは獅子が率いる軍隊だったのだ。
 ラインハルトは攻撃を集中された中央部隊を思い切ってわざと薄くさせた。そしてこちらの中央部隊に火力を集中させた。恐らくわざと薄くした中央に向かって、我が艦隊を突出させるつもりなのだろう。そして引きずり出したところ、後退しつつこれを叩くつもりなのだ。ならば、それをそのまま利用させてもらおう。





「敵中央部隊突出しつつあります!」
 ラインハルトの旗艦でオペレータが声を上げる。
「よし、前進をやめろ。前後の艦隊を交互に下がらせつつ、ゆっくり後退だ。攻撃の手を緩めるな!」
 ラインハルトは先手を取られたが、ただそれだけだった。同盟艦隊は我が艦隊の出鼻を挫いて、我が艦隊を押す潰そうとしているが、好きなようにはさせぬ。罠にかけたのは、こちらなのだ。
「敵艦隊が完全に突出しています」
 戦局は彼の望んだ通りだった。敵艦隊は中央から引きずり出され、もう少しでU字陣に入る。そしてこれを叩いて、敵の出血を強いるのだ。
 その時、ラインハルトの脳裏に過った光があった。それは彼の拳を反射的に強く握らせた。
(なんだ、この違和感は?)
 突如飛来した違和感は彼の全身を駆け巡り、そしてそれは増大を続ける。彼は握りしめた拳を唇に触れさせた。そして気付く。
「全艦隊、急速だ! 急速前進せよ!」





「今だ!」
 これはフロルの叫びであって、
「全艦隊突撃! 中
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